日本地球惑星科学連合2018年大会

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[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL31] 地域地質と構造発達史

2018年5月20日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山縣 毅(駒澤大学総合教育研究部自然科学部門)、大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

[SGL31-P06] 埼玉県寄居-小川地域の緑色岩メランジュの構造岩塊

*小野 晃

キーワード:跡倉ナップ 、緑色岩メランジュ 、構造岩塊

三波川-秩父帯では変成年代が異なる高圧型変成岩が積層しているが,この地質構造を切断してナップ岩体が各地に分布している.その代表が跡倉ナップである.埼玉県寄居-小川地域の跡倉ナップ南縁部には木呂子緑色岩メランジュが分布している.木呂子緑色岩メランジュは木呂子変成岩(三波川変成岩の一員),構造岩塊,蛇紋岩から構成されている.木呂子変成岩には多種多様な岩塊が挟在しており,緑色岩メランジュ[1]が形成されている.木呂子変成岩が上昇した地殻浅部には多種多様な地質体が近接して分布しており,木呂子変成岩はそれらの一部を構造岩塊として捕獲したと推定される.この見解の他に緑色岩メランジュは変成した堆積性メランジュという可能性もある.堆積性メランジュであれば角閃岩や角閃石岩の岩塊は木呂子変成作用を受けて,普通角閃石がアクチノ閃石や緑泥石に著しく交代されることが想定される.花崗岩質の岩塊は変成花崗岩になることが想定される.実際にはこれらの想定に反する構造岩塊は多い[2].しかし,その具体的記載は非常に少ない.そこでここに具体例をいくつか報告する.添付図に岩石試料の採集地点や偏光顕微鏡写真などが提示されている. 
○木呂子地域のトーナル岩,地点 f :プレーナイト脈と緑泥石脈が非常に多い.普通角閃石は緑泥石に少し交代されているが,アクチノ閃石は生成していない.○木部のトーナル岩,地点g:山腹に約30mにわたって点在.塊状で粗粒.カリ長石は微量で有色鉱物は少ない.六角板状の緑泥石化した黒雲母が僅かに存在する.緑簾石などの変質鉱物が認められるが,大部分の斜長石は著しい再結晶作用を受けていない.○居用地域の角閃石岩,地点a:アクチノ閃石岩中の径25cmほどの球状の小岩塊.薄い板状のブドウ石脈が見られる.角閃石は交代作用を受けていない.○居用集落東方約600mの角閃岩,地点d:層厚10m以上の角閃岩で北方に蛇紋岩,南方に苦鉄質変成岩が分布する.これらの岩石の片理面は高角度に傾斜している.角閃岩の斜長石や普通角閃石は交代作用をほとんど受けていない.しかし,角閃岩にはブドウ石脈,緑泥石脈および微量のアクチノ閃石を含む石英脈がかなり多く,幅1cmほどの破砕帯も存在する.石英脈はブドウ石脈を切断している.○木呂子地域の角閃岩,地点e:アクチノ閃石岩に介在する厚さ5mほどの小岩塊.南端部と北端部はアクチノ閃石岩と高角度で接している.K-Ar角閃石年代は402Ma.ブドウ石脈(画像e)が形成されているが,角閃石は再結晶作用を受けていない.○木部地域の酸性凝灰岩,地点:珪質の細粒緻密な基質中に角礫状の岩片や石英やカリ長石の微小粒子が点在する非変成岩. 
一部の構造岩塊は次に記述するように弱変成作用をかなり強く受けて粗粒の角閃石や斜長石が溶解して,比較的微細な鉱物がかなり大量に生成している.新たに生成した鉱物には定向配列が認められない.二次的鉱物の生成時期が問題であるが,不明である.この種の岩石の具体例は次のようである.
○居用の変成トーナル岩,地点b:おもに角閃石とソシューライトから成る.破断された角閃石やソシューライトの間隙を石英‐斜長石脈が満たしている.脈鉱物はおもに新鮮な斜長石で,石英や微細なアクチノ閃石や緑泥石が少量認められる.粗粒の角閃石が著しく溶解され,細粒のアクチノ閃石が大量に形成されている場合もある.○居用の緑簾石角閃岩: 普通角閃石や曹長石が破断作用や交代作用を著しく受けており,微細なアクチノ閃石や緑泥石などが生成している[1].○メタガブロ:各地に点在する.ブドウ石-パンペリー石相の弱変成作用を受けており,ブドウ石,緑泥石,方解石,石英および微量のアクチノ閃石などが斜長石や角閃石を交代している.ブドウ石脈や緑泥石脈も多数形成されている.
なお,栃谷地域の緑色岩メランジュ(添付図Tochiya)には緑色岩,蛇紋岩,珪質スレート,ひすい輝石-石英岩,微量の黒雲母を含む石英-白雲母片岩が存在する.珪質スレートの白雲母は変成鉱物なのか続成鉱物なのか判断しかねるほど微細である.隣接するみかぶユニットでは泥質片岩のフェンジャイトは粗粒であり,みかぶユニットは緑色岩メランジュよりも明瞭に高温の変成岩である.    
[1]平島,1984,地質雑,90, p.629. [2]小野,2017,日本地質学会第124年学術大会,R4-P-16.