日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL31] 地域地質と構造発達史

2018年5月20日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山縣 毅(駒澤大学総合教育研究部自然科学部門)、大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

[SGL31-P09] 瀬戸内海手島の領家花崗岩中に発達する小剪断帯の幾何学と形成過程

*川本 一樹1荒井 優祐2高木 秀雄1 (1.早稲田大学、2.日鉄鉱業)

キーワード:小剪断帯、fault-like shear zone、paired shear zone、領家古期花崗岩、破砕–塑性遷移領域

瀬戸内海手島南部には領家古期花崗岩 (粗粒角閃石黒雲母花崗岩) が存在し,そこには多数の小剪断帯が発達している.これらの小剪断帯は既存の破断面を利用しており,小剪断帯の中心部に存在する石英脈はマイロナイト化しているため,破砕–塑性遷移領域で変形を被ったと考えられている (荒井ほか, 2005).本研究では,手島の小剪断帯を幾何学的に解析することで小剪断帯の形成過程を推定した.
 手島南部に存在する領家古期花崗岩は左横ずれを示す弱いマイロナイト化を被っている.面構造はENE–WSW走向でほぼ垂直の傾斜をなし,線構造はほぼ水平~20°ENEに沈下する.一方,小剪断帯は右横ずれの剪断センスを示す.WNW–ESE走向でほぼ垂直な傾斜の剪断面をなし,ENE–WSW走向を示す領家古期花崗岩の面構造を切るように発達している.線構造は水平~30°ESEに沈下する.
 手島の小剪断帯のうち一部では,剪断中心部が2本存在し,それらが平行に発達している.また,剪断変形による面構造が剪断中心部の両側に対称的に発達するもの (両側剪断帯) と片側のみに非対称に発達するもの (片側剪断帯) が存在し,一つの小剪断帯において両側剪断帯から片側剪断帯へと移行する様子も観察できる.このような小剪断帯の産状は,paired shear zone (Mancktelow and Pennacchioni, 2005) やfault-like shear zone (Pennacchioni, 2005) で報告されているが,手島の場合はその産状が不明瞭である.この片側剪断帯の成因については,さらに詳細な検討が必要である.
応力場の変遷とテクトニクス
 領家古期花崗岩の放射年代は 93 Ma のRb–Sr全岩アイソクロン年代が報告されており (Kagami et al., 1988),手島の領家花崗岩のマイロナイト化はこれ以降に起きた.中新世の日本海の拡大に伴う回転は,西南日本では時計回りに 47° と考えられており (Hoshi et al., 2015),回転以前の姿勢を復元すると,左横ずれを示すマイロナイトの面構造の走向はNNE–SSW,右横ずれの小剪断帯の走向はNE–SWとなる.このような,マイロナイト面構造と逆センスかつやや異なる走向を持つ小剪断帯の形成は,85 Ma を境にその前のイザナギプレートのNNW方向への沈み込みから,その後のクラプレートのW方向への沈み込みへの変化 (Maruyama and Seno, 1986) に調和的である.同様の右横ずれ剪断帯は,淡路島の岩脈に認められる現在のNW–SE走向のマイロナイト化でも報告されている (加納・高木, 2013).

文献
荒井優祐・小野高明・高木秀雄, 2005, 日本地質学会第112年学術大会講演要旨, 257.
Hoshi, H., Kato, D., Ando, Y. and Nakashima, K., 2015, Earth Planets Space, 67, 92.
Kagami, H., Honma, H., Shirahase, T. and Nureki, T., 1988, Geochem. Jour., 22, 69–79.
加納大道・高木秀雄, 2013, 地質雑, 119, 776–793.
Mancktelow, N. S. and Pennacchioni, G., 2005, Jour. Struct. Geol., 27, 645–661.
Maruyama, S. and Seno, T., 1986, Tectonophysics, 127, 305–329.
Pennacchioni, G., 2005, Jour. Struct. Geol., 27, 627–644.