日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL31] 地域地質と構造発達史

2018年5月20日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山縣 毅(駒澤大学総合教育研究部自然科学部門)、大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

[SGL31-P18] モンゴル ゴビ砂漠 Bayshin Tsav 火山岩類の全岩組成とK-Ar年代

*國府 陽一郎1,2今山 武志1青木 一勝3実吉 玄貴1,2八木 公史4猪川 千晶4澤田 順弘5石垣 忍2豊田 新3Tsogtbaatar Khishigjav6Mainbayar Buuvei6 (1.岡山理科大学 自然科学研究所、2.岡山理科大学 生物地球学部、3.岡山理科大学 理学部、4.蒜山地質年代学研究所、5.島根大学 名誉教授、6.モンゴル科学アカデミー 古生物学地質学研究所)

キーワード:モンゴル、火山岩、全岩組成、K-Ar 年代

2016年に実施したモンゴルゴビ砂漠Bayshin Tsav調査において新たな火山岩類を発見したが、その起源は明らかではない。研究地域の西側には130 Ma以降の大陸リフト起源火山岩が報告されている(Yarmolyuk et al., 2015)。また、モンゴルは世界最大の付加体であるCentral Asian Orogenic Belt(CAOB)の一部であり、CAOBに関連した火山岩類が多く存在する。特に、研究地域の東側では、South Mongolian microcontinent (SMM)とNorth China Craton(NCC)の衝突前の沈み込みによって形成された約270 Maの背弧型火山岩が報告されている(Li et al., 2015) 。本研究では、新たにBayshin Tsav地域に見つかった火山岩類の全岩組成分析とK-Ar年代測定を実施して、その起源と結晶年代を制約し、周囲の火山岩類と比較して、その成因を明らかにすることを目的とする。火山岩12試料の全岩組成分析は、ガラスビード法により岡山大学設置のXRF装置(ZSX Primus 2)で測定し、Excel、分析ソフト(Minpet Version 2.0)を用いて解析した。また、偏光顕微鏡観察により年代測定に適した新鮮な長石を含む6試料を選択して、K-Ar年代測定を実施した。試料を粉末化、磁性物除去、塩酸処理後にKを炎光分光分析法(Nagao et al., 1984)、Arは38Arをスパイクとする同位体希釈法、質量分析(Itaya et al., 1991)にて測定した。

 全岩組成の主要元素の測定結果より、採取した火山岩類は、玄武岩、玄武岩質粗面安山岩、安山岩、粗面安山岩、粗面岩/粗面デイサイトのアルカリ系列の岩石に区分され、主に安山岩、デイサイトに卓越する。また、SiO2をX軸、各元素をY軸にしたハーカー図では、各試料は一直線上にプロットされ、一つの火山系列で生成されたと考えられる。全岩組成の微量元素の測定値から、N-Type MORBで規格化したスパイダー図は、液相濃集元素に富む左上がりのパターンを示し、Nbの負の異常を示すなどの特徴が見られた。Zr/Al2O3-TiO2/Al2O3テクトニクス場判別図を作成した。これより本研究地域の火山岩類は、プレート内火山岩類ではなく、島弧型火山岩類である事を示している。火山岩6試料のK-Ar年代値は、約270~240 Maを示し、この時期に安山岩及びデイサイトに卓越した火成活動があったと考えられる。スパイダー図における液相濃集元素に富む左上がりのパターン、Nbの負の異常は沈み込み帯火山岩類の特徴である。このことは図1のテクトニクス場判別図からも支持される。また火山岩類は、安山岩、デイサイトに卓越したアルカリ系列岩石であり、前弧型ではなく背弧型火山岩類の特徴を示す。K-Ar年代値を考慮すると、Bayshin Tsavで新たに発見された火山岩類は約270~240Maの背弧型の沈み込みで形成されたと推定される。この起源は研究地域東側に位置するSMMとNCCの境界付近に分布するCAOB沈み込み背弧型火山岩と類似している。



参考文献

Yarmolyuk et al., 2015. JAES, v. 111, p. 604-623.

Li et al., 2015. Island Arc, v. 24, p. 404-424.

Condie, K.C., 1989. Lithos, v. 23, p. 1–18.

Itaya et al., 1991. Mineralogical Journal, v. 15, p.203-221.

Nagao et al.,1984. The memoirs of the Geological Society of Japan, no.9, p19-38.