[SGL32-P01] 千葉県銚子地域下部更新統犬吠層群小浜層における複合層序
キーワード：酸素同位体層序、古地磁気層序
千葉県周辺の更新統は房総半島中部から東部に分布する上総層群，銚子地域に分布する犬吠層群，房総半島南端に分布する豊房層群，横浜地域の上総層群がある．上記の同時代に堆積した地層と比較を行うことで空間的な古環境復元が可能となる．さらに，銚子地域周辺の海域は親潮と黒潮の会合域となっているため，気候変動に伴う親潮・黒潮の南北移動を鋭敏に捉えることができる．
本研究では銚子地域に分布する犬吠層群小浜層を研究対象地域とする．小浜層においては岩相層序や微化石層序，古地磁気層序，テフラ層序などいくつかの層序学的研究が行われてきた（酒井，1990; 藤岡・亀尾，2004; Kameo et al., 2006など）．Kameo et al. (2006) の陸上ボーリングコアを用いた研究では小浜層最上部までの酸素同位体記録が得られているが，それより下位では古海洋学的研究の鍵となる酸素同位体記録が得られていなかった．また，藤岡・亀尾（2004）のテフラ対比に基づくと，小浜層上部の一部層準はJaramillo正磁極亜帯に相当するが，酒井（1990）の古地磁気層序では当該層準において正磁極亜帯が確認されていない．そこで本研究の目的を，犬吠層群小浜層における古地磁気－酸素同位体記録を用いた年代層序の確立とEMPTを通して起こるローカルな気候変動の推定とした．
千葉県銚子市三崎町から旭市刑部岬にかけての海崖および旭市上永井の露頭において岩相記載，柱状図の作成を行い，酸素同位体測定用試料は71層準，古地磁気測定用試料66層準のサンプリングを行った．これらのうち，酸素同位体測定用試料は有孔虫が産出した63層準について拾い出し，同位体測定を行った．酸素同位体測定には国立科学博物館筑波研究施設所有の同位体比質量分析計MAT253，自動前処理装置Kiel ４ Carbonate Deviceを用いた．また，岩石磁気・古地磁気測定は茨城大学古地磁気ラボで実施した．
［古地磁気測定結果］
3種の消磁法における消磁経路と，段階熱消磁に伴う帯磁率変動の様子を複合的に考慮した結果，犬吠層群小浜層では全層準を通して複数の磁性鉱物種があると考えられる．また，岩石磁気学的実験の結果から，磁性鉱物の含有量，粒径などの変動が比較的大きいことが示唆された．
以上を踏まえ，古地磁気データの信頼性を検討した結果，組み合わせ消磁によって計30層準より初生的であると判断される固有磁化成分を抽出することができた． その結果，層厚71.5m～74.9mにおいて正極性を示す層準が検出された．この正磁極亜帯は，酒井（1990）では検出されていなかったものであり，藤岡・亀尾 （2004）のテフラ対比や本研究の酸素同位体層序の対比に基づくとJaramillo正磁極亜帯に相当することがわかった．この結果，小浜層におけるJaramillo正磁極亜帯の下限は層厚71.5mの層準，上限は本研究で固有磁化成分が抽出されなかった層厚76.0m～79.0mの層準の中にあると考えられる．
［酸素同位体測定結果，年代モデルの構築］
酸素同位体測定には浮遊性有孔虫 Globorotalia inflata 1種と，底生有孔虫Bulimina spp., Uvigerina spp., Melonis spp.の3属を用いて行った．底生有孔虫の同位体値はBulimina spp. にその他2属の種間較正を施した．
得られた浮遊性有孔虫の酸素同位体曲線を，Nozaki et al. (2014) の酸素同位体層序，藤岡ほか(2003），藤岡・亀尾（2004）のテフラ・微化石層序と対比させ，上記の地磁気極性反転層準を考慮し，ターゲットカーブのLR04スタックカーブ(Lisiecki & Raymo, 2005)と対比させることでコントロールポイントを設定し年代モデルの構築，および平均堆積速度の計算を行った．その結果，本研究層準の年代は最下位の対比点が1732.5ka，最上位の対比点が952kaとなり，Jaramillo正磁極亜期の開始は1072.0ka，終了は964.0ka～1007.2kaとなった．Ogg（2012）におけるGeomagnetic Polarity Time ScaleではJaramillo正磁極亜期の開始は1072ka，終了は988kaとされており，開始時期は本研究と完全に一致し，終了時期も誤差の範囲で一致するという結果になった．また，堆積速度は最大で56.7cm/kyr，最小で4.25cm/kyrとなった．小浜層中部の堆積速度は4.25cm/kyrと非常に小さい値を示し，藤岡・亀尾 (2004)の結果と整合的な結果となった．
本研究では銚子地域に分布する犬吠層群小浜層を研究対象地域とする．小浜層においては岩相層序や微化石層序，古地磁気層序，テフラ層序などいくつかの層序学的研究が行われてきた（酒井，1990; 藤岡・亀尾，2004; Kameo et al., 2006など）．Kameo et al. (2006) の陸上ボーリングコアを用いた研究では小浜層最上部までの酸素同位体記録が得られているが，それより下位では古海洋学的研究の鍵となる酸素同位体記録が得られていなかった．また，藤岡・亀尾（2004）のテフラ対比に基づくと，小浜層上部の一部層準はJaramillo正磁極亜帯に相当するが，酒井（1990）の古地磁気層序では当該層準において正磁極亜帯が確認されていない．そこで本研究の目的を，犬吠層群小浜層における古地磁気－酸素同位体記録を用いた年代層序の確立とEMPTを通して起こるローカルな気候変動の推定とした．
千葉県銚子市三崎町から旭市刑部岬にかけての海崖および旭市上永井の露頭において岩相記載，柱状図の作成を行い，酸素同位体測定用試料は71層準，古地磁気測定用試料66層準のサンプリングを行った．これらのうち，酸素同位体測定用試料は有孔虫が産出した63層準について拾い出し，同位体測定を行った．酸素同位体測定には国立科学博物館筑波研究施設所有の同位体比質量分析計MAT253，自動前処理装置Kiel ４ Carbonate Deviceを用いた．また，岩石磁気・古地磁気測定は茨城大学古地磁気ラボで実施した．
［古地磁気測定結果］
3種の消磁法における消磁経路と，段階熱消磁に伴う帯磁率変動の様子を複合的に考慮した結果，犬吠層群小浜層では全層準を通して複数の磁性鉱物種があると考えられる．また，岩石磁気学的実験の結果から，磁性鉱物の含有量，粒径などの変動が比較的大きいことが示唆された．
以上を踏まえ，古地磁気データの信頼性を検討した結果，組み合わせ消磁によって計30層準より初生的であると判断される固有磁化成分を抽出することができた． その結果，層厚71.5m～74.9mにおいて正極性を示す層準が検出された．この正磁極亜帯は，酒井（1990）では検出されていなかったものであり，藤岡・亀尾 （2004）のテフラ対比や本研究の酸素同位体層序の対比に基づくとJaramillo正磁極亜帯に相当することがわかった．この結果，小浜層におけるJaramillo正磁極亜帯の下限は層厚71.5mの層準，上限は本研究で固有磁化成分が抽出されなかった層厚76.0m～79.0mの層準の中にあると考えられる．
［酸素同位体測定結果，年代モデルの構築］
酸素同位体測定には浮遊性有孔虫 Globorotalia inflata 1種と，底生有孔虫Bulimina spp., Uvigerina spp., Melonis spp.の3属を用いて行った．底生有孔虫の同位体値はBulimina spp. にその他2属の種間較正を施した．
得られた浮遊性有孔虫の酸素同位体曲線を，Nozaki et al. (2014) の酸素同位体層序，藤岡ほか(2003），藤岡・亀尾（2004）のテフラ・微化石層序と対比させ，上記の地磁気極性反転層準を考慮し，ターゲットカーブのLR04スタックカーブ(Lisiecki & Raymo, 2005)と対比させることでコントロールポイントを設定し年代モデルの構築，および平均堆積速度の計算を行った．その結果，本研究層準の年代は最下位の対比点が1732.5ka，最上位の対比点が952kaとなり，Jaramillo正磁極亜期の開始は1072.0ka，終了は964.0ka～1007.2kaとなった．Ogg（2012）におけるGeomagnetic Polarity Time ScaleではJaramillo正磁極亜期の開始は1072ka，終了は988kaとされており，開始時期は本研究と完全に一致し，終了時期も誤差の範囲で一致するという結果になった．また，堆積速度は最大で56.7cm/kyr，最小で4.25cm/kyrとなった．小浜層中部の堆積速度は4.25cm/kyrと非常に小さい値を示し，藤岡・亀尾 (2004)の結果と整合的な結果となった．