日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT22] 核-マントルの相互作用と共進化

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:飯塚 毅(東京大学)、渋谷 秀敏(熊本大学大学院先端科学研究部基礎科学部門地球環境科学分野)、土屋 卓久(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター、共同)、太田 健二(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)

[SIT22-P27] 地球ニュートリノフラックスの精度向上に向けた単一岩体での高密度サンプリングによる組成変化の評価

*南 一輝1上木 賢太2飯塚 毅3榎本 三四郎4田中 宏幸1 (1.東京大学地震研究所、2.国立研究開発法人 海洋研究開発機構、3.東京大学、4.ワシントン大学)

KamLAND (Kamioka Liquid Scintillator Anti-Neutrino Detector)で2005年に地球ニュートリノが観測されて以来、核・マントル中のウラン・トリウム(U-Th)量を推定するために十分な観測データが蓄積されてきた(The KamLAND Collaboration, 2011)。既存の地球内部でのU-Th量はコンドライト隕石中の難揮発性元素組成から推定されたものであったが、KamLANDで観測される地球ニュートリノにより、核・マントルおよび地殻を含む地球内部のU-Th量や分布を初めて直接推定することが可能になった。この地球ニュートリノ観測値を用いて、地球深部のU-Th分布を高精度で推定するために重要となるのが、KamLAND近傍の地殻中のU-Th分布の高精度での見積もりである (Enomoto et al., 2007)。日本列島地殻の元素分布は、地震波速度構造をもとにした3次元岩相推定と岩相毎に確率密度関数化された組成モデルを組み合わせた新たな手法により推定が行われている(Takeuchi et al., in preparation)。

この手法により推定された日本列島地殻のU-Th濃度から、地殻由来の地球ニュートリノフラックスの推定が可能となったが、計算される日本列島地殻由来のニュートリノフラックスは70%程度のエラーを含む状況である。不定性の原因のひとつとしては、単一の岩相内でU-Th濃度が幅広く変化することである。このような単一岩相内でのU-Th濃度のばらつきにより、岩相のU-Th濃度の代表値の不定性を定量的に見積もれず、地球ニュートリノフラックスの見積もりに大きな不定性の幅がもたらされる。もし、岩相内の位置とU-Th濃度の相関関係、すなわちU-Thの空間分布が明らかになれば、現状では不定性が70%程度ある日本列島地殻由来のニュートリノフラックスについて、不定性を最大で30%程度まで削減できる可能性がある。

そこで、U-Th濃度の空間分布を求めるために、格子状に岩石をサンプリングし、単一岩体内部での元素分布やサンプルサイズ依存性の検討を行った。調査対象地域は、茨城県笠間市に分布する稲田花崗岩である。稲田花崗岩は領家帯に属し (Ishihara, 1977)、約60Maに貫入し固結したと推定されている(Arakawa and Takahashi, 1988)、粗粒普通角閃石黒雲母花崗岩である (高橋など, 2011)。サンプリングポイントは高精度GNSS受信機を用いて測位を行なった。分析手順として、岩石サンプルから一辺約2 cmの立方体を複数個切り出し、それぞれのサンプルについてガラスビードを作成し、XRF分析を実施した。同一岩体内部での複数点でサンプリングを行なった岩石サンプルの化学組成と、高精度GNSS受信機によって高精度(1m精度)で得られたサンプリング位置から、岩体内の位置やサンプル間の距離と、濃度変化幅の関係を理解することが出来る。この関係から、単一岩体に由来する地球ニュートリノフラックスの不定性を制約することを目指す。