日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT22] 核-マントルの相互作用と共進化

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:飯塚 毅(東京大学)、渋谷 秀敏(熊本大学大学院先端科学研究部基礎科学部門地球環境科学分野)、土屋 卓久(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター、共同)、太田 健二(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)

[SIT22-P32] 内核半径の異なる回転球殻における地球ダイナモ維持に必要なレイリー数に関する研究

*西田 有輝1加藤 雄人1松井 宏晃2松島 政貴3熊本 篤志1 (1.東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻、2.Dept. of Earth and Planetary Sciences, University of California, Davis、3.東京工業大学理学院地球惑星科学系)

キーワード:地球ダイナモ、過去の地球、内核サイズ

地球は固有磁場を有する惑星である。古地磁気研究から、地球磁場は少なくとも過去35億年間現在と同程度の強度を維持してきたと考えられている[e.g., Biggin et al., 2015]。また、地球熱史研究から、過去10億年かけて内核が現在の大きさまで成長してきたと議論されている[e.g., O’Rourke & Stevenson, 2016]。地球ダイナモは外核における磁気流体の対流によって引き起こされていると考えられており、駆動力は熱対流による浮力または組成対流による浮力である。内核半径riに対する外核半径roの比ri/roは現在0.35であり、この半径比における磁気流体の対流の特徴はこれまで詳細に調べられている。一方、過去の地球環境に対応する半径比 ri/ro < 0.35 におけるシミュレーションはあまり例がなく、理解が十分進んでいない。過去の地球の状態を探るために、ri/ro < 0.35 なる設定の下でのダイナモ過程を調べることは重要である。本研究では数値ダイナモコードCalypso[Matsui et al., 2014]を使用して、現在の内核より小さいサイズの内核設定で熱対流とダイナモに関する一連の数値実験を行なった。ダイナモ過程の対流の特徴を調べるため、本研究ではダイナモの性質に関してレイリー数依存性に着目した。レイリー数Raは浮力に関係するパラメータであり、対流の駆動力である。Raのみ変数として扱い、他の支配パラメータであるエクマン数E、プラントル数Pr、磁気プラントル数PmはそれぞれE=10-3, Pr=1, Pm =5と固定した。


ダイナモシミュレーションにおいて、ダイナモ作用のonset付近のRaの性質は様々な半径比において明らかになっており[Heimpel et al., 2005]、特に現在の半径比ri/ro=0.35におけるダイナモ作用の傾向は調べられている[Christensen and Aubert, 2006]が、現在より小さい半径比におけるRaに関するダイナモの振る舞いは十分に理解されていない。そこで本研究では半径比がri/ro=0.15, 0.25, 0.35の場合に 1.9Racrit < Ra < 9.7Racrit の範囲でダイナモシミュレーションを行ない、内核が小さい場合の傾向について定量的に評価した。ここで、Racritとは臨界レイリー数のことである。ri/ro=0.25の結果より、ダイナモ作用のonsetより少し大きいRaでdipoleが卓越するダイナモが維持され、それよりも大きなRaでdipoleより高次のnon-dipoleのダイナモが維持され、Ra > 8.1Racrit においてダイナモは維持されない、ということがわかった。流体の磁気エネルギーはダイナモのonsetで最大となり、Raが大きくなるにつれて減少していくことが明らかとなった。このことは、今回の設定では対流が激しい場合にダイナモが維持されやすいわけではないことを示唆する。今回見られた傾向は半径比がri/ro=0.15の場合にも当てはまると予想される。また、同じレイリー数Ra/Racrit(=3.6)の場合の比較から、磁気双極子モーメントは内核サイズが小さい方が小さい値になることがわかった。このことは、dipoleが支配的になるダイナモになりやすい対流は内核が小さい場合に起きにくいことを表している。さらに本研究では、dipoleが支配的になるRaの範囲が、内核が小さいほど狭くなることを見出した。この結果は過去の地球において取りうるRaが非常に選択的であることを示唆する。さらに、シミュレーション結果を現実の物理量で解釈するため、コア-マントル境界と内核境界における平均温度の差ΔTを算出した。ri/ro=0.25におけるΔTri/ro=0.35のときより大きくなった。これより、dipoleが支配的なダイナモを維持するのに必要な浮力は内核が小さいほど大きくなると結論された。