日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT22] 核-マントルの相互作用と共進化

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:飯塚 毅(東京大学)、渋谷 秀敏(熊本大学大学院先端科学研究部基礎科学部門地球環境科学分野)、土屋 卓久(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター、共同)、太田 健二(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)

[SIT22-P39] 黒曜石-流紋岩における冷却速度によるテリエ法での振舞いの変化

*福間 浩司1 (1.同志社大学理工学部環境システム学科)

キーワード:古地磁気強度、FORC、黒曜石

黒曜石は急速に冷却された流紋岩マグマのガラス相であり,細粒のチタンに乏しいチタン磁鉄鉱を含むため,過去の地球磁場強度の信頼できる記録を保持していることが期待できる.黒曜石-流紋岩複合体の垂直断面では,複合体内の異なる冷却速度によってガラス質から濁った黒曜石さらには結晶質流紋岩への変化がみられる.古地球磁場強度を決定するThellier実験では,岩石試料は粒度に応じて異なる挙動を示し,さらに冷却速度に応じて熱残留磁化強度が変化するすることが知られている.黒曜石-流紋岩複合体の垂直断面は,天然の岩石を用いてThellier法での挙動の粒径や冷却速度に対する依存性をテストする機会を与える.
阿蘇火山の高野尾羽根黒曜石-流紋岩の3つの掘削孔の上部と下部から黒曜石試料を採取した.ガラス質や濁った黒曜石は,室温または低温の磁化率周波数依存性によって明らかにされるように,超常磁性 (SP) から単磁区粒子 (SD) を含む.ガラス質黒曜石は濁った黒曜石よりも細かいSPの粒径を示す.FORC測定の結果は,垂直可逆リッジに続く低保磁力領域の水平方向のリッジによって示されるように,SPとSD粒子の混合物を支持する.しかしながら,一部の黒曜石は 100 mT に達する高い保磁力と高い相互作用磁場を示した.複合体の中央部から収集された流紋岩試料は,典型的な多磁区粒子のFORCダイアグラムを示す.
Thellier古地磁気強度測定は,34個の試料について45 μT を適用して自動スピナー磁力計 Tspin を用いて行った.ガラス質黒曜石試料の一部は,マグネタイトのキュリー温度 (580℃) 以下 50℃ 以内の高く狭いアンブロッキング温度を示し,アライ図上で約 45 μT を示す直線を示した.このサンプルは高い保磁力および相互作用を示すFORC図に対応する.一方,比較的粗粒なガラス質黒曜石は約70 μT を示す高勾配の直線を示し,濁った黒曜石はアライ図上でS字状の曲線を示した.流紋岩試料は典型的な多磁区粒子の上向き凹状曲線をもつ.比較的粗粒なガラス質黒曜石は実験室で付加した熱残留磁化に対してはテリエ法で期待される古地磁気強度を示した.
高野尾羽根黒曜石-流紋岩複合体の垂直方向の位置に応じて,様々なテリエ法での挙動が観察された.粗粒の流紋岩と濁った黒曜石は,アライ図上で直線部分を示さなかったためThellier法に適さない.SP-SD 粒子を含有するガラス状黒曜石は直線を生成し,1つの複合体の中で約1.5倍の古地球磁場強度を与えるが,この違いは冷却速度によるものと考えられる.