[SMP37-P01] 神居古潭変成岩蛇紋岩メランジュ中の角閃岩及び青色片岩構造岩塊の圧力温度履歴の解明
キーワード:神居古潭変成岩、沈み込みチャネル、鉱物化学組成累帯構造、圧力温度履歴
北海道中央部の空知−エゾ帯中部には、比較的低い地温勾配で形成された高圧型変成岩類が分布し、神居古潭変成岩と呼ばれている。神居古潭変成岩の分布域には様々なタイプの構造岩塊を含む蛇紋岩メランジュが 広く分布している(日本地質学会, 2010)。蛇紋岩メランジュ中の構造岩塊の圧力温度履歴を解明することは、それらの岩石が経験した沈み込み帯(沈み込みチャネル)のテクトニクスを議論するのに有効である。
本研究では、神居古潭峡谷と旭川市周辺の幌加内−江丹別地域と神居古潭峡谷地域から蛇紋岩メランジュ中の構造岩塊を5試料採取し、鉱物組み合わせを記載し、また角閃石、ガーネットおよびエピドートについて化学組成累帯構造の解析をSEM-EDSを用いて行った。
SEM-EDS分析の結果、5試料の岩石は圧力温度履歴の観点から以下の4タイプに分けられることがわかった。角閃石の化学組成がアクチノ閃石−普通角閃石からアクチノ閃石へ変化し、ルチルがチタン石に置換される組織を含む、エピドート角閃岩相から緑色片岩相へ温度が低下する履歴をもつ角閃岩。角閃石の化学組成が普通角閃石あるいはアクチノ閃石−普通角閃石からアクチノ閃石を経由して藍閃石へ変化し、パンペリー石が存在する、角閃岩相から温度低下・圧力上昇により青色片岩相に至り、その後、パンペリー石アクチノ閃石相まで圧力と温度が低下する履歴をもつ角閃岩。角閃石の化学組成が藍閃石からアクチノ閃石へ変化し、エピドートがローソン石に置換される組織を含む、青色片岩相内で温度低下・圧力上昇後、同相内で圧力・温度が低下する履歴をもつ青色片岩。角閃石の化学組成が普通角閃石から藍閃石へ変化し、ガーネット包有物として産するチタン石がルチルに置換される組織とマトリックスを構成するルチルがチタン石に置換される組織の両方が確認できる、エピドート角閃岩相内で温度上昇後、青色片岩相まで温度低下と圧力上昇の履歴をもつガーネットエピドート角閃岩の4つである。
5試料全てが後退変成作用の記録を多く残しており、沈み込み帯の冷却が示唆される。ガーネットエピドート角閃岩については、ガーネット結晶中のMn量が温度上昇のベル型の成長化学組成累帯構造を示し、また、ガーネット包有物として産するエピドートのピスタサイト成分(Fe3+/(Fe3+ + Al3+)がガーネットのコア包有物からリム包有物にかけて減少し、マトリクスでは上昇していることから、累進から後退変成作用の記録を連続的に記録していることがわかった。ガーネットエピドート角閃岩はおそらく海洋地殻下部を構成していたはんれい岩起源と推察されるが、沈み込んだ後、沈み込むスラブから剥がれてその場に停滞している間に沈み込み帯が冷却し、青色片岩相の変成作用を受けた可能性がある。他の角閃岩は海洋地殻上部を構成していた玄武岩起源と考えられるが、圧力温度履歴は同様のテクトニクスで説明可能である。今後はより定量的な鉱物化学組成分析と年代測定を行い、角閃岩が被った圧力―温度―時間履歴を定量的に明らかにし、沈み込みチャネルのテクトニクスをより厳密に明らかにする必要がある。
本研究では、神居古潭峡谷と旭川市周辺の幌加内−江丹別地域と神居古潭峡谷地域から蛇紋岩メランジュ中の構造岩塊を5試料採取し、鉱物組み合わせを記載し、また角閃石、ガーネットおよびエピドートについて化学組成累帯構造の解析をSEM-EDSを用いて行った。
SEM-EDS分析の結果、5試料の岩石は圧力温度履歴の観点から以下の4タイプに分けられることがわかった。角閃石の化学組成がアクチノ閃石−普通角閃石からアクチノ閃石へ変化し、ルチルがチタン石に置換される組織を含む、エピドート角閃岩相から緑色片岩相へ温度が低下する履歴をもつ角閃岩。角閃石の化学組成が普通角閃石あるいはアクチノ閃石−普通角閃石からアクチノ閃石を経由して藍閃石へ変化し、パンペリー石が存在する、角閃岩相から温度低下・圧力上昇により青色片岩相に至り、その後、パンペリー石アクチノ閃石相まで圧力と温度が低下する履歴をもつ角閃岩。角閃石の化学組成が藍閃石からアクチノ閃石へ変化し、エピドートがローソン石に置換される組織を含む、青色片岩相内で温度低下・圧力上昇後、同相内で圧力・温度が低下する履歴をもつ青色片岩。角閃石の化学組成が普通角閃石から藍閃石へ変化し、ガーネット包有物として産するチタン石がルチルに置換される組織とマトリックスを構成するルチルがチタン石に置換される組織の両方が確認できる、エピドート角閃岩相内で温度上昇後、青色片岩相まで温度低下と圧力上昇の履歴をもつガーネットエピドート角閃岩の4つである。
5試料全てが後退変成作用の記録を多く残しており、沈み込み帯の冷却が示唆される。ガーネットエピドート角閃岩については、ガーネット結晶中のMn量が温度上昇のベル型の成長化学組成累帯構造を示し、また、ガーネット包有物として産するエピドートのピスタサイト成分(Fe3+/(Fe3+ + Al3+)がガーネットのコア包有物からリム包有物にかけて減少し、マトリクスでは上昇していることから、累進から後退変成作用の記録を連続的に記録していることがわかった。ガーネットエピドート角閃岩はおそらく海洋地殻下部を構成していたはんれい岩起源と推察されるが、沈み込んだ後、沈み込むスラブから剥がれてその場に停滞している間に沈み込み帯が冷却し、青色片岩相の変成作用を受けた可能性がある。他の角閃岩は海洋地殻上部を構成していた玄武岩起源と考えられるが、圧力温度履歴は同様のテクトニクスで説明可能である。今後はより定量的な鉱物化学組成分析と年代測定を行い、角閃岩が被った圧力―温度―時間履歴を定量的に明らかにし、沈み込みチャネルのテクトニクスをより厳密に明らかにする必要がある。