日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP37] 変形岩・変成岩とテクトニクス

2018年5月21日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:中村 佳博(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、針金 由美子(産業技術総合研究所)

[SMP37-P08] スリランカ・ワンニ岩体産グラニュライトの部分溶融組織からみた高度変成作用の年代と継続時間

*平山 恵理1角替 敏昭1高村 悠介1堤 之恭2Sanjeewa MALAVIARACHCHI3西宮 ゆき4 (1.筑波大・地球、2.国立科学博物館地学研究部、3.ペラデニヤ大学、4.物質材料研究機構 電子顕微鏡ステーション)

キーワード:ゴンドワナ超大陸、スリランカ、ワンニ岩体、ジルコンウラン-鉛年代測定法、部分溶融、FIB-TEM分析 

スリランカは原生代末期のゴンドワナ超大陸集合時に形成された造山帯の中央部に位置し、超大陸の形成過程を記録している重要な地域である。この地域の変成年代については、約550 Maという年代が多くの先行研究で得られているが、変成作用の時間スケールについては現在でも様々な議論がなされている。そこで本研究では、ゴンドワナ超大陸の衝突の時期とプロセスを明らかにするために、ジルコンのウラン-鉛年代測定法を用いた変成作用の時間スケールの検討を行う。解析に使用した岩相は、スリランカ・ワンニ岩体のワルピタ地域から採集されたものであり、累進および後退変成作用における部分溶融によって形成されたと考えられる含ざくろ石優白色岩と含菫青石優白色岩である。これら岩石の鉱物組み合わせは、それぞれ、ざくろ石+石英+黒雲母+斜長石+ジルコン+磁鉄鉱、菫青石+石英+黒雲母+斜長石+カリ長石+ジルコン+磁鉄鉱+スピネルである。この2タイプの優白色岩がメルトからの結晶化物であることを確認するため、FIB-TEM分析により鉱物粒間の観察と解析を行った。その結果、含ざくろ石優白色岩中の石英の粒間には繊維状鉱物(緑泥石?)とアルミノケイ酸塩鉱物(珪線石?)が、含菫青石優白色岩中の石英の粒間には繊維状鉱物が確認された。これらは後退変成作用の影響を強く受けていることを示し、メルトの存在は確認できなかったが、FIB-TEM分析が変成岩中の鉱物粒間の解析に有効であることが分かった。
LA-ICP-MSを用いた含ざくろ石優白色岩と含菫青石優白色岩に含まれるジルコンのウラン-鉛および希土類元素の測定により、約580 Ma, 550 Ma, 520 Maの年代が得られた。これらはそれぞれ、累進変成作用、ピーク変成作用、後退変成作用に対応すると考えられる。この結果はSantosh et al. (2014) が報告した546 MaやTakamura et al. (2015) が報告した537 Maなどの、ワンニ岩体のピーク変成年代の先行研究と調和的である。変成ジルコンのTh/U比は~0.48と高い値を示し、このことは超高温変成作用を受けた可能性があることを示唆する。また、累進変成作用と後退変成作用の年代から、変成作用の期間は約6000万年間であったと推定される。



引用文献

Santosh, M., Tsunogae, T., Malaviarachchi, S.P.K., Zhang, Z., Ding, H., Tang, L., Dharmapriya, P.L., 2014. Neoproterozoic crustal evolution in Sri Lanka: Insights from petrologic, geochemical and zircon U-Pb and Lu-Hf isotopic data and implications for Gondwana assembly. Precambrian Research, 255, 1-29.

Takamura, Y., Tsunogae, T., Santosh, M., Malaviarachchi, S.P.K., Tsutsumi, Y., 2015. Petrology and zircon U-Pb geochronology of metagabbro from the Highland Complex, Sri Lanka: Implications for the correlation of Gondwana suture zones. Journal of Asian Earth Sciences 113, 826-841.