[SSS08-P24] 熊本地震に伴い現れた阿蘇カルデラ北西部の地表断層群と九州中部の活断層の形態の類似性
★招待講演
キーワード:熊本地震、地殻変動、九州中部、活断層、だいち2号
1.はじめに
2016年熊本地震は地表の広範囲で地殻変動による変位が生じており、国土地理院は「だいち2号」(ALOS-2)のSARデータを用いてその変位を面的に検出している。これらの地表変位の大部分は震源断層の断層運動で説明できるものの、地表には震源断層の動きでは説明できない複雑な変位が数多く現れている(Fujiwara et al. 2016,EPS)。
本講演では、これらの変位のうち最も特徴的である阿蘇カルデラ北西部の鞍岳周辺に現れた正断層群と九州中部の他の活断層の様式の類似性について報告する。
2.鞍岳断層群
阿蘇カルデラ北西部の鞍岳周辺では、西北西−東南東走向の非常に多くの正断層が熊本地震に伴って出現した(Fig 1、2)。その変位量は数cm~数10cmにわたる。北部では南落ち、南部では北落ちと、鋸の歯のようにその地殻変動は非常に揃っており、南北方向の一様な伸長場が働いたことが推定できる(Fig 1)。
これらの一部は、国土地理院の活断層図(鈴木他 2017)等でも「鞍岳断層群」として活断層と認識されているが、熊本地震では、この地域一帯に鞍岳断層群に一致する断層だけではなく非常に多くの正断層が地表に出現した。
鞍岳周辺では余震が発生していないこともあり、本震である布田川断層帯での断層運動とほぼ同時に発生したと考えられるものの、布田川断層帯の断層モデルによるΔCFFではその成因を説明できず、熊本地震がトリガーであったとしても、正断層群が受けた熊本地震の本震のひずみを解放するものではなさそうである。しかし、本震の断層モデルによる地殻変動を除去したのちの残差の地殻変動場では、正断層群を形成するような南北に開く伸長場が現れていることから、たまっていたひずみが南北伸長場を形成したことは間違いない。
3.万年山−崩平山断層帯
九州中部では、別府湾から雲仙にかけて、ほぼ東西方向の複数の正断層が平行に多数存在している。一例として「万年山(はねやま)−崩平山(くえのひらやま)断層帯」をFig.2に示す。Fig.2では同じスケールで鞍岳周辺に出現した正断層群も描いており、両者を見比べると、北部では南落ち、南部では北落ちになっていることや、全体的な断層の配置が非常に似通っており、これらが同様な仕組みで形成されてきたことを示唆する。なお、万年山−崩平山断層帯のほうが断層の密度が低いが、鞍岳断層群でも既知の活断層として認定されているものが少ないことから、実際にはもっと数多くの断層が存在している可能性がある。
4.九州中部に共通する正断層群の成因は何か?
国土地理院の20年程にわたるGEONETによる地殻変動からは、九州中部には、強い東西圧縮とそれよりはやや小さい南北伸長が見られ、せん断応力も大きい。鞍岳断層群と万年山−崩平山断層帯の形態の類似性から推測すると、主要断層としての布田川断層帯のような東北東−西南西走向の断層で大きな地震が発生することで東西方向の主要なひずみを解放したさいに、残された一部の南北伸長を正断層群で解放している、との仮説が想起される。なお、九州中部の別府湾から雲仙にかけてこうした正断層群が存在しており、これらの正断層群が火山性の地質の場所に存在していることと、南北伸長という広域のひずみ場の特性と相まって九州中部の独特の形態がこの地域一帯に存在していると考えられる。
2016年熊本地震は地表の広範囲で地殻変動による変位が生じており、国土地理院は「だいち2号」(ALOS-2)のSARデータを用いてその変位を面的に検出している。これらの地表変位の大部分は震源断層の断層運動で説明できるものの、地表には震源断層の動きでは説明できない複雑な変位が数多く現れている(Fujiwara et al. 2016,EPS)。
本講演では、これらの変位のうち最も特徴的である阿蘇カルデラ北西部の鞍岳周辺に現れた正断層群と九州中部の他の活断層の様式の類似性について報告する。
2.鞍岳断層群
阿蘇カルデラ北西部の鞍岳周辺では、西北西−東南東走向の非常に多くの正断層が熊本地震に伴って出現した(Fig 1、2)。その変位量は数cm~数10cmにわたる。北部では南落ち、南部では北落ちと、鋸の歯のようにその地殻変動は非常に揃っており、南北方向の一様な伸長場が働いたことが推定できる(Fig 1)。
これらの一部は、国土地理院の活断層図(鈴木他 2017)等でも「鞍岳断層群」として活断層と認識されているが、熊本地震では、この地域一帯に鞍岳断層群に一致する断層だけではなく非常に多くの正断層が地表に出現した。
鞍岳周辺では余震が発生していないこともあり、本震である布田川断層帯での断層運動とほぼ同時に発生したと考えられるものの、布田川断層帯の断層モデルによるΔCFFではその成因を説明できず、熊本地震がトリガーであったとしても、正断層群が受けた熊本地震の本震のひずみを解放するものではなさそうである。しかし、本震の断層モデルによる地殻変動を除去したのちの残差の地殻変動場では、正断層群を形成するような南北に開く伸長場が現れていることから、たまっていたひずみが南北伸長場を形成したことは間違いない。
3.万年山−崩平山断層帯
九州中部では、別府湾から雲仙にかけて、ほぼ東西方向の複数の正断層が平行に多数存在している。一例として「万年山(はねやま)−崩平山(くえのひらやま)断層帯」をFig.2に示す。Fig.2では同じスケールで鞍岳周辺に出現した正断層群も描いており、両者を見比べると、北部では南落ち、南部では北落ちになっていることや、全体的な断層の配置が非常に似通っており、これらが同様な仕組みで形成されてきたことを示唆する。なお、万年山−崩平山断層帯のほうが断層の密度が低いが、鞍岳断層群でも既知の活断層として認定されているものが少ないことから、実際にはもっと数多くの断層が存在している可能性がある。
4.九州中部に共通する正断層群の成因は何か?
国土地理院の20年程にわたるGEONETによる地殻変動からは、九州中部には、強い東西圧縮とそれよりはやや小さい南北伸長が見られ、せん断応力も大きい。鞍岳断層群と万年山−崩平山断層帯の形態の類似性から推測すると、主要断層としての布田川断層帯のような東北東−西南西走向の断層で大きな地震が発生することで東西方向の主要なひずみを解放したさいに、残された一部の南北伸長を正断層群で解放している、との仮説が想起される。なお、九州中部の別府湾から雲仙にかけてこうした正断層群が存在しており、これらの正断層群が火山性の地質の場所に存在していることと、南北伸長という広域のひずみ場の特性と相まって九州中部の独特の形態がこの地域一帯に存在していると考えられる。