日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS08] 活断層と古地震

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所、共同)、松多 信尚(岡山大学大学院教育学研究科)

[SSS08-P34] 医療用X線CTを活用した断層破砕帯の最新活動部認定手法

*岩森 暁如1高木 秀雄2朝日 信孝3杉森 辰次3中田 英二4野原 慎太郎4上田 圭一4 (1.関西電力株式会社、2.早稲田大学、3.㈱ダイヤコンサルタント、4.電力中央研究所)

キーワード:医療用X線CT、線減弱係数、CT値、線質硬化、断層破砕帯の最新活動部

概要

X線CTは,1972年にHounsfieldによって実用化されて以降,地球科学分野においても多数の研究成果が報告されている (例えばWellington and Vinegar,1987).医療用X線CTは非破壊で断層破砕帯内部の三次元構造を知ることができる.画像のコントラストを決めるCT値 (単位はHounsfield) は,次式で示される (Johns et al.,1993).

CT=1,000×(μ-μw) /μw 

ただし,μ=r(a+bZ3.8/E3.2) (Wellington and Vinegar,1987) .

(μ:試料の線減弱係数,μw:水の線減弱係数, r:電子密度 (容積密度) ,Z:有効原子番号,E:光子エネルギー (keV) ,a:クライン-仁科係数,b:9.8 × 10-24)

 以上より,線減弱係数μは密度,有効原子番号及びX線CT装置の管電圧に依存し,試料の線減弱係数μと水の線減弱係数μwとの比で定義されるCT値も同様に,これら3つのパラメータに依存することが判る.

したがって,断層岩の母岩の組成に変化がなく,管電圧を一定に保つ場合,CT値は試料の密度に大きく依存する.しかし,医療用X線CTでは連続X線を使用するため,試料が均質でも内部に比べて縁辺部のCT値が高くなる線質硬化による偽像が生じる (中野ほか,2000) .そこで,正確なCT値を測定するために,線質硬化の影響を除去する手法の検討を行い,断層内部構造可視化のための精度を上げた.

 本検討に用いた断層岩は,長野県伊那市の中央構造線非持露頭で採取した.非持露頭では,砂礫層を切る活断層が認められており (杉山ほか,2017) ,その断層の延長部が,三波川帯泥質片岩の破砕帯中に連続することが確認できる.そこで,この最新活動部を挟むように大きさ15 cm程度の定方位試料を採取し,医療用X線CT装置を用いてCT観察を行った.その結果,断層ガウジではCT値が小さく,カタクレーサイトではCT値が高いことを確認した.また,単結晶の鉱物及び泥質片岩の堅岩を用いてCT値,密度,原子番号及び管電圧の関係について検討し,それを踏まえて線質硬化の影響軽減対策を実施した.その結果,CT値を用いた断層破砕帯の最新活動部の認定の精度を上げることが可能となった.






引用文献

中野司・中島善人・中村光一・池田進, 2000, 地質雑, 106, 363-378.

Johns, R. A., Steude, J. S., Castanier, L. M., and Roberts, P.V., 1993, JGR, 98 (B2) , 1889–1900.

Wellington, S. L., and H. J. Vinegar, 1987, J. Pet. Technol., 39, 885-898

杉山幸太郎ほか,2017,日本地質学会124年学術大会演旨 R15-P-4.