日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 地震波伝播:理論と応用

2018年5月24日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:西田 究(東京大学地震研究所)、白石 和也(海洋研究開発機構)、新部 貴夫((株)地球科学総合研究所、共同)、澤崎 郁(防災科学技術研究所)

[SSS10-P05] 岩石の水飽和率・間隙構造が弾性波速度に及ぼす影響

*堀川 卓哉1梅澤 良介1桂 誠1中嶋 悟1 (1.大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)

キーワード:弾性波速度、水飽和率、間隙径分布、砂岩

岩石内を伝播する弾性波の速度 (VP,VS),減衰は透水率や間隙流体の性質に依存することが知られている。複数の流体が岩石内に存在するもっとも単純な系は水/空気であり、水飽和率 (Sw)とVP,VSの関係を理解するための様々な研究が行われてきた。既存の研究から、不飽和岩石のVPが粘弾性効果を持つことは報告されているが、Sw-VP関係を定量的に記述するには至っていない。本研究では、間隙径分布の異なる3種類のベレア砂岩(間隙率 22.6, 19.1, 11.6 %; 透水率 170, 230, 5 mD; 以下それぞれベレアA,ベレアB,ベレアCと略記)を用い、乾燥によってSwを減少させながらVP (100 kHz ー 700 kHz), VS (100 kHz), 歪み変化の測定を行った。
ベレア砂岩のVPは0.2<Sw<1.0において低下→上昇という変化を示し、その変化傾向は周波数依存的であった。岩石の乾燥過程では大きい系の間隙から先に水を失うことが知られており、間隙径分布のデータからある水飽和率におけるメニスカス径を推測できる。乾燥に伴うメニスカス径の変化を考慮し、不飽和岩石に拡張したKatz and Thompsonモデル(Nishiyama and Yokoyama, 2014)から水飽和率と透水率の関係を求めた。得られた透水率を、波動伝播に伴う間隙水の移動で生じる岩石の粘弾性効果を記述する代表的な二つのモデル(Global flowモデルとPatchy saturationモデル)に導入した (Biot, 1956; White, 1975)。その結果、両方の間隙水移動モデルの効果を組み合わせることによって、Sw-VP関係を再現できることが明らかになった。一方、VSSw<0.2で急激に上昇し、この変化は歪み測定から明らかになった乾燥収縮と同時に生じていることが分かった。
本研究は、不飽和な岩石におけるSw-VP関係を解釈する際、間隙水分布の変化がVPに与える影響を考慮に入れる必要があることを示した。