[SSS11-P09] 地震波干渉法で探る地殻深部反射面
キーワード:地殻内反射面、地震波干渉法、地震活動
近畿地方中北部の北摂・丹波地域は定常的に微小地震活動が活発な地域である。この活動は近年発生した大地震の余震ではなく、特定の活断層に沿うこともなく面状に広く分布していることが特徴である。地震発生は長年にわたりほぼ一定のレートを保っており極めて定常的である。周辺には第四紀火山活動も無く、他地域では見られない特異な定常的活動の原因はよくわかっていないが、地殻内の流体の存在が大きな要因であると考えてられている。(片尾,2005;片尾、2013など)
この地域で観測される微小地震観測波形には、初動からおよそ10秒後に顕著な後続波が見られる例が多い。反射波の振幅は非常に大きく、直達S波のそれに匹敵する場合もある。これは下部地殻の深さ約20~25kmに存在し、北向きにやや傾き下がる反射面から返ってくるS波であることが知られている。(片尾、1994など)その高い反射係数から、この反射面には流体(おそらく高温高圧の水)が多量に存在していると推定される。反射面に潤沢に存在する水が上部地殻へと上昇していき、定常的な微小地震活動を引き起こす原因となっている可能性が高い。すなわち、地殻内の流体の存在と地震発生には密接な関係があり、内陸地震発生のメカニズムを解明する上で重要な問題である。
自然地震の観測に基づく反射波解析により、北摂・丹波山地の微小地震が活発な地域と、その直下の反射面の存在範囲はほぼ一致するという結果が得られている。(青木、2014)大阪平野や滋賀県東部など北摂・丹波山地に隣接する周辺地域では、微小地震活動は低調で下部地殻反射面も検知されていない。
しかしながら、そもそも自然地震があまり発生しない場所においては、反射面を検知することは困難である。すなわち、反射面(地下流体)が存在するのでその上部の地震活動が引き起こされているのか、地震が起きるのでその直下の反射面が検知し易いのかを判別できない。いわば「鶏が先か卵が先か」ともいえるこの疑問に決着をつける必要がある。
近年、地震波干渉法 (Seismic Interferometry) を用いた地下構造の解析が盛んに行われるようになってきた。近畿地方に地震波干渉法による解析の例としては、三輪(2015)が約2年間にわたる広帯域地震観測網(F-net)の雑微動記録を利用し、深さ35kmのモホ面からのP波およびS波の反射波を捉えている。本研究では、震動源としての自然地震に依存しない地震波干渉法を用いることにより、近畿地方中北部において深部S波反射面の存在の有無を検証し、下部地殻の流体の存在範囲と、その上部の地震発生頻度との因果関係を明らかにすることを目的とする。
使用するデータは,周辺地域における定常観測網のオンラインデータに加え,京都大学防災研究所で2008 年末より琵琶湖西岸から丹波山地にかけて83点の臨時観測点を設けて行っている稠密オフライン観測(飯尾,2011;片尾,2013)のデータを用いる。オンラインおよびオフラインデータを結合するデータ編集は終了しており,現時点で約6年間にわたる連続波形データ(約20TB)が使用可能になっている。
自然地震で観測される下部地殻反射面からの後続波は,原波形記録で目視できるほど大きな振幅を持つ場合が多いことから,地震波干渉法解析でも容易に検知できる可能性があり,自己相関関数(ACF)ではLagTime10秒付近に何らかのシグナルが現れることが期待される。講演では,これらのデータを用いて予察的に,反射波が最も顕著に観測される,京都府中部の旧八木町(現:南丹市)付近の観測点のデータを基に,観測期間,フィルタなどを変えながら行った結果について報告する。
(本研究は,JSPS科研費JP16K05538の助成を受けて行っています。)
この地域で観測される微小地震観測波形には、初動からおよそ10秒後に顕著な後続波が見られる例が多い。反射波の振幅は非常に大きく、直達S波のそれに匹敵する場合もある。これは下部地殻の深さ約20~25kmに存在し、北向きにやや傾き下がる反射面から返ってくるS波であることが知られている。(片尾、1994など)その高い反射係数から、この反射面には流体(おそらく高温高圧の水)が多量に存在していると推定される。反射面に潤沢に存在する水が上部地殻へと上昇していき、定常的な微小地震活動を引き起こす原因となっている可能性が高い。すなわち、地殻内の流体の存在と地震発生には密接な関係があり、内陸地震発生のメカニズムを解明する上で重要な問題である。
自然地震の観測に基づく反射波解析により、北摂・丹波山地の微小地震が活発な地域と、その直下の反射面の存在範囲はほぼ一致するという結果が得られている。(青木、2014)大阪平野や滋賀県東部など北摂・丹波山地に隣接する周辺地域では、微小地震活動は低調で下部地殻反射面も検知されていない。
しかしながら、そもそも自然地震があまり発生しない場所においては、反射面を検知することは困難である。すなわち、反射面(地下流体)が存在するのでその上部の地震活動が引き起こされているのか、地震が起きるのでその直下の反射面が検知し易いのかを判別できない。いわば「鶏が先か卵が先か」ともいえるこの疑問に決着をつける必要がある。
近年、地震波干渉法 (Seismic Interferometry) を用いた地下構造の解析が盛んに行われるようになってきた。近畿地方に地震波干渉法による解析の例としては、三輪(2015)が約2年間にわたる広帯域地震観測網(F-net)の雑微動記録を利用し、深さ35kmのモホ面からのP波およびS波の反射波を捉えている。本研究では、震動源としての自然地震に依存しない地震波干渉法を用いることにより、近畿地方中北部において深部S波反射面の存在の有無を検証し、下部地殻の流体の存在範囲と、その上部の地震発生頻度との因果関係を明らかにすることを目的とする。
使用するデータは,周辺地域における定常観測網のオンラインデータに加え,京都大学防災研究所で2008 年末より琵琶湖西岸から丹波山地にかけて83点の臨時観測点を設けて行っている稠密オフライン観測(飯尾,2011;片尾,2013)のデータを用いる。オンラインおよびオフラインデータを結合するデータ編集は終了しており,現時点で約6年間にわたる連続波形データ(約20TB)が使用可能になっている。
自然地震で観測される下部地殻反射面からの後続波は,原波形記録で目視できるほど大きな振幅を持つ場合が多いことから,地震波干渉法解析でも容易に検知できる可能性があり,自己相関関数(ACF)ではLagTime10秒付近に何らかのシグナルが現れることが期待される。講演では,これらのデータを用いて予察的に,反射波が最も顕著に観測される,京都府中部の旧八木町(現:南丹市)付近の観測点のデータを基に,観測期間,フィルタなどを変えながら行った結果について報告する。
(本研究は,JSPS科研費JP16K05538の助成を受けて行っています。)