[SSS11-P10] 大阪湾岸泉北グラーベン北方の
築港新町-南恵我之荘測線における重力測定
キーワード:大阪平野、上町断層帯、地下構造、逆断層、数値地理情報、公共基準点
1. はじめに
地震防災を進める上で問題となるのが,よく知られていない伏在活断層の存在である.活断層の研究はこれまで地表踏査やその結果に基づいて選定された測線での弾性波探査の成果を中心に進められてきた.一方,大阪泉北地域では堆積基盤の構造を把握するため,これらに加え,上町断層帯を横切る多くの測線で稠密な重力測定が実施されている.その結果,堺市西区の浜寺地区での重力測定において湾岸に沿う伏在する推定活断層(吉岡・他, 2013)の位置が確認された(領木,2017).今回は領木(2017)の測線北側約2.5kmに設定した東西測線で重力測定を行った結果を報告する.
2. 対象地域
今回解析した測線(図1)は大阪府堺市西区築港新町西詰から羽曳野市南恵我之荘町までの東西約15kmである.このうち,堺市堺区三条通から同市北区新金岡町までの約6km間は領木(2015)による測定である.
3. 測定方法
重力値はLaCoste & Romberg相対重力計G-308によって測定された.この測定は原則として国土地理院基本基準点および公共街区基準点・補助点上で行われ,各点の測量成果(国土地理院,2017)が重力補正のために用いられた.街区補助点が亡失している場合は地図上で亡失前の位置を確認して重力測定点とした.なお,平野部で測定を行ったため,今回は地形補正を施していない.
4. 測定結果
東西方向に投影したfree air異常および単純Bouguer異常の結果を図2に示す.横軸は今回の測線の西端からの距離である.図2には吉岡・他(2013)が示した距離3.2km付近に位置する推定地下活断層(1),3.5km付近の伏在活断層の延長部(2),5.0km付近の推定活断層と,岡田・他(1996)が示した6.5km付近の上町断層(4)とそれに伴う活撓曲,岡田・他(2009)が示した13.3km付近の推定活断層(5),の位置を併記している.これらの断層はいずれも今回の測線におおむね直交している.
5. 考察
図2を見ると,三国丘高重力異常地域の存在が目に付く.この重力断面におけるブーゲー異常の極大値は15.6mgalで,ここから東部の平坦部までの距離は約3.8km,その差は約4.0mgalである.ブーゲー異常は極大位置の西方でなだらかに減少してゆくが,よく見ると地表の断層位置(1)~(4)に呼応してそれぞれの東側に変化が認められる.逆断層の場合,地表での断層位置はブーゲー異常の変曲点より下盤側にある(領木,2017)ので,これらは整合的である.今回の測線の西端からなだらかに上昇するブーゲー異常の分布はこれらの基盤断層による効果が重畳したものであろう.岡田・他(2009)が示した断層(5)は,ブーゲー異常には顕著な特徴を示していない.この周辺の微地形を見ると2m程度の東上がりを示しているので,西落ちの逆断層が示唆されるが,これについては,今後詳細な検討が必要である.一方,ブーゲー異常の極大位置の東方には活断層の存在が知られていない.しかし,ブーゲー異常の分布を見る限り,ここにも大きな基盤構造の変位が示唆される.
なお,泉北地域で測定当時に現行の地理院地図に相当する地理情報アクセスが難しかったため未公表となっている複数の測線における重力測定結果があり,今後,順次これらを公表してゆく予定である.
謝辞
秋田大学国際資源学部資源開発環境学教室の西谷忠師教授(当時・現名誉教授)を始めとする物理探査学研究室の皆様には重力測定に際し過大な配慮を賜った.記して謝意を表します.
参考文献
国土地理院(2017) : 基準点成果等閲覧サービス,http://sokuseikagis1.gsi.go.jp/index.aspx.
中田・他(1996):1:25,000都市圏活断層図「大阪西南部」,国土地理院.
中田・他(2009):1:25,000都市圏活断層図「大阪東南部第2版」,国土地理院.
岡田・他(1996):1:25,000都市圏活断層図「岸和田」,国土地理院.
岡田・他(2009):1:25,000都市圏活断層図「五條第2版」,国土地理院.
領木(2015):基本基準点測量および街区基本調査の成果を援用した都市域での野外調査 -基準点上での稠密重力測定例-,日本地球惑星科学連合2015年大会予稿集,S-SS31-PO5.
領木(2017):大阪湾岸中央南部地域に沿う泉北グラーベン北域を横断する重力調査,日本地球惑星科学連合2017年大会予稿集,SSS16-P14.
吉岡・他(2013):活断層の活動区間を正確に把握するための詳細位置・形状等の調査,上町断層における重点的な調査観測平成22~24年度成果報告書,文部科学省研究開発局・京都大学防災研究所,p. 5 - 65.
地震防災を進める上で問題となるのが,よく知られていない伏在活断層の存在である.活断層の研究はこれまで地表踏査やその結果に基づいて選定された測線での弾性波探査の成果を中心に進められてきた.一方,大阪泉北地域では堆積基盤の構造を把握するため,これらに加え,上町断層帯を横切る多くの測線で稠密な重力測定が実施されている.その結果,堺市西区の浜寺地区での重力測定において湾岸に沿う伏在する推定活断層(吉岡・他, 2013)の位置が確認された(領木,2017).今回は領木(2017)の測線北側約2.5kmに設定した東西測線で重力測定を行った結果を報告する.
2. 対象地域
今回解析した測線(図1)は大阪府堺市西区築港新町西詰から羽曳野市南恵我之荘町までの東西約15kmである.このうち,堺市堺区三条通から同市北区新金岡町までの約6km間は領木(2015)による測定である.
3. 測定方法
重力値はLaCoste & Romberg相対重力計G-308によって測定された.この測定は原則として国土地理院基本基準点および公共街区基準点・補助点上で行われ,各点の測量成果(国土地理院,2017)が重力補正のために用いられた.街区補助点が亡失している場合は地図上で亡失前の位置を確認して重力測定点とした.なお,平野部で測定を行ったため,今回は地形補正を施していない.
4. 測定結果
東西方向に投影したfree air異常および単純Bouguer異常の結果を図2に示す.横軸は今回の測線の西端からの距離である.図2には吉岡・他(2013)が示した距離3.2km付近に位置する推定地下活断層(1),3.5km付近の伏在活断層の延長部(2),5.0km付近の推定活断層と,岡田・他(1996)が示した6.5km付近の上町断層(4)とそれに伴う活撓曲,岡田・他(2009)が示した13.3km付近の推定活断層(5),の位置を併記している.これらの断層はいずれも今回の測線におおむね直交している.
5. 考察
図2を見ると,三国丘高重力異常地域の存在が目に付く.この重力断面におけるブーゲー異常の極大値は15.6mgalで,ここから東部の平坦部までの距離は約3.8km,その差は約4.0mgalである.ブーゲー異常は極大位置の西方でなだらかに減少してゆくが,よく見ると地表の断層位置(1)~(4)に呼応してそれぞれの東側に変化が認められる.逆断層の場合,地表での断層位置はブーゲー異常の変曲点より下盤側にある(領木,2017)ので,これらは整合的である.今回の測線の西端からなだらかに上昇するブーゲー異常の分布はこれらの基盤断層による効果が重畳したものであろう.岡田・他(2009)が示した断層(5)は,ブーゲー異常には顕著な特徴を示していない.この周辺の微地形を見ると2m程度の東上がりを示しているので,西落ちの逆断層が示唆されるが,これについては,今後詳細な検討が必要である.一方,ブーゲー異常の極大位置の東方には活断層の存在が知られていない.しかし,ブーゲー異常の分布を見る限り,ここにも大きな基盤構造の変位が示唆される.
なお,泉北地域で測定当時に現行の地理院地図に相当する地理情報アクセスが難しかったため未公表となっている複数の測線における重力測定結果があり,今後,順次これらを公表してゆく予定である.
謝辞
秋田大学国際資源学部資源開発環境学教室の西谷忠師教授(当時・現名誉教授)を始めとする物理探査学研究室の皆様には重力測定に際し過大な配慮を賜った.記して謝意を表します.
参考文献
国土地理院(2017) : 基準点成果等閲覧サービス,http://sokuseikagis1.gsi.go.jp/index.aspx.
中田・他(1996):1:25,000都市圏活断層図「大阪西南部」,国土地理院.
中田・他(2009):1:25,000都市圏活断層図「大阪東南部第2版」,国土地理院.
岡田・他(1996):1:25,000都市圏活断層図「岸和田」,国土地理院.
岡田・他(2009):1:25,000都市圏活断層図「五條第2版」,国土地理院.
領木(2015):基本基準点測量および街区基本調査の成果を援用した都市域での野外調査 -基準点上での稠密重力測定例-,日本地球惑星科学連合2015年大会予稿集,S-SS31-PO5.
領木(2017):大阪湾岸中央南部地域に沿う泉北グラーベン北域を横断する重力調査,日本地球惑星科学連合2017年大会予稿集,SSS16-P14.
吉岡・他(2013):活断層の活動区間を正確に把握するための詳細位置・形状等の調査,上町断層における重点的な調査観測平成22~24年度成果報告書,文部科学省研究開発局・京都大学防災研究所,p. 5 - 65.