[SSS12-P10] 小地震の地震モーメント
キーワード:地震モーメント、小地震、微小地震
地震の規模を表すものとして,マグニチュードが使われている。小さな地震に対しては,実体波あるいは表面波の最大振幅を用いてマグニチュードを定義していることが多く,これらの方法は簡便で比較的安定して地震規模を表すことが可能である。微小地震観測を目的とした高感度地震観測網(Hi-net)を運用している防災科学技術研究所でも,速度波形記録の最大振幅値からマグニチュードを算出し,ホームページを通じて公表している。地震の規模を示す別の指標としては,地震モーメントがある。地震モーメントは,断層面の大きさと平均すべり量によって定義される。防災科学技術研究所が運用する広帯域地震観測網(F-net)では,シグナルがノイズに比べ十分に大きいと思われるM3.5以上の地震に対して地震モーメントおよびモーメントテンソル解をホームページ上で公表している。M3.5未満の地震の規模については,一般的に波形記録の最大振幅値からマグニチュードを算出するのみであり,地震モーメントの推定は余震観測などの特別なデータが取得できている場合を除いて,なされていない。地震モーメントを正確に推定するためには,地震記録におけるノイズレベルの精査や,サイト増幅特性などの各種補正が必要となる。Hi-netは主に地下100m以上の深さに高感度の地震計が設置されているため,ノイズレベルが小さく,M3.5未満の地震も高いSN比で記録されている。また,連続地動記録を取得しているため,各観測点のノイズレベルも測定できている。そこで,我々はHi-netで記録されているM3.5未満の小さい地震に対してノイズレベルを確認しながら地震モーメントの推定を試みた。
本研究では,関東と中部地方の境界付近にある丹沢地域で発生した深さ20km以浅の地震のS波部分の変位スペクトルを用いて地震モーメントの推定を試みた。複数のHi-net観測点で記録された地震記録に対して,計器特性(固有周期1Hz,減衰定数0.7)と距離減衰を補正し,S波到達時の1秒前と19秒後の20秒間の波形を切り出してスペクトルを計算した。地震モーメント推定の前に,別途推定した周波数毎の非弾性減衰およびサイト増幅特性の補正をしている。また,スペクトル振幅を変位スペクトルに変換してから,コーナ周波数より十分長周期側,かつ,シグナルがノイズレベルよりも高い周波数帯のスペクトル振幅値を読みとった。なお,ノイズレベルは初動到達時1秒前までの20秒間で推定している。その後,S波速度構造および媒質の密度を仮定して地震モーメントを推定した。この結果,少なくとも最大振幅から推定するマグニチュードで2.0程度の地震に対して,地震モーメントが推定できることが分かった。また,浅い地震で複数の観測点が比較的近くにあった場合は,M1程度でも地震モーメントの推定は可能であった。
本研究では,関東と中部地方の境界付近にある丹沢地域で発生した深さ20km以浅の地震のS波部分の変位スペクトルを用いて地震モーメントの推定を試みた。複数のHi-net観測点で記録された地震記録に対して,計器特性(固有周期1Hz,減衰定数0.7)と距離減衰を補正し,S波到達時の1秒前と19秒後の20秒間の波形を切り出してスペクトルを計算した。地震モーメント推定の前に,別途推定した周波数毎の非弾性減衰およびサイト増幅特性の補正をしている。また,スペクトル振幅を変位スペクトルに変換してから,コーナ周波数より十分長周期側,かつ,シグナルがノイズレベルよりも高い周波数帯のスペクトル振幅値を読みとった。なお,ノイズレベルは初動到達時1秒前までの20秒間で推定している。その後,S波速度構造および媒質の密度を仮定して地震モーメントを推定した。この結果,少なくとも最大振幅から推定するマグニチュードで2.0程度の地震に対して,地震モーメントが推定できることが分かった。また,浅い地震で複数の観測点が比較的近くにあった場合は,M1程度でも地震モーメントの推定は可能であった。