日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] 地震予知・予測

2018年5月24日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:馬場 俊孝(徳島大学大学院産業理工学研究部)

[SSS13-P03] 1946年南海地震のプレスリップについて -潮位記録による検証-

*梅田 康弘1板場 智史1 (1.産業技術総合研究所)

キーワード:1946年南海地震、プレスリップ、井戸水、潮位、土佐清水

1946年南海地震(以下では本震)の直前に太平洋沿岸部にある井戸水が著しく減少したという目撃証言がある.梅田・板場(2017)は本震前にプレスリップがあったと考え,スリップの断層モデルを提案した.本稿ではこのモデルを,土佐清水と宇和島の検潮データによって検証する.四国西部では本震の1週間に井戸水が減少している.モデルからは土佐清水の隆起と宇和島の沈降との差は2.7 cm以上と推定されている.1週間前という時間と,両地点の変動の差の,ふたつについて検証する.1946年12月の潮位観測データから天文潮位を取り除いた潮位偏差を両地点で求め,2点間の差を図1に示した.同図の点線は24時間移動平均値であるが,矢印で示した12月12日から宇和島に対する土佐清水の潮位が低下している.この潮位変化が土地の隆起と沈降に対応しているとすれば,本震の9日前に土佐清水が隆起(相対的に宇和島が沈降)していたことになり,井戸水が減少した本震の1週間前とほぼ一致する.土佐清水の気圧を図1の下段に示したが,この時期の気圧は安定している.モデルから推定された両地点の変動差は2.7 cm以上であり,それ以上であれば井戸水は涸れる.井戸水が涸れる時間は半日程度と推定されているので,12日の低下の開始(12日07時)から半日後(同日19時)までの潮位偏差の差をとると8.2 cmである.モデルから推定された2.7 cm以上は,これと矛盾しない.12日以降は14日まで低下しているが,同様のグラフを10月から12月まで見ると,この程度の変化は他にもある.従って,上記の潮位変化をもって土佐清水で土地の隆起(相対的に宇和島の沈降)があったとは必ずしも断言できるものではない.ただ12日からの低下は21日の本震まで9日間低下しており,このような長期の一方的な変化はないようである.なお図1の潮位偏差の差が半日と1日周期で振幅が大きく変化しているのは,観測潮位が天文潮位より小さいためである.何らかの理由で観測潮位が追従していない状態だったと思われる.

文献:梅田康弘・板場智史,2017,1946年南海地震前の井戸水減少から推定されるプレスリップモデル,日本地震学会講演予稿集,S14-06.