[SSS14-P14] KiK-net記録のデコンボリューション解析による地盤のS波速度・減衰構造の推定
キーワード:S波速度、減衰、波形インバージョン
表層地盤のS波速度と減衰構造は地震動振幅に大きく影響を与えるため、その推定は地震動予測の観点から大変重要である。先行研究のFukushima et al. (2016) は、KiK-netの地中記録を地表記録でデコンボリューションし,その波形上に現れる入射波と反射波のスペクトル比から地中―地表間のS波の減衰パラメータを推定した。しかしデコンボリューション波形には、入射波と反射波以外にも、観測点間に存在する層境界からの反射によるフェイズが出現するため、それらのフェイズを利用することにより地震波速度と減衰の層構造を推定できる可能性がある。そこで本研究では、水平成層構造を仮定して地中/地表デコンボリューションの全波形を合わせこむことにより、KiK-net観測点下の1次元S波速度・減衰構造を推定することにした。
本研究では、デコンボリューション波形の入射波と反射波部分を分離できるよう、検層データから計算したS波理論往復走時が0.5秒以上であるCHBH10(千葉)観測点を選び,震央距離150km以下、最大加速度100gal以下の地震波形データを使用した。まず地中記録のS波初動時刻を読み取り、そこから20秒間の時刻窓を設定した.この時間窓の地中記録を同じ時間窓の地表記録でデコンボリューションした。計算は周波数領域で行い,スペクトルの安定化のために、幅0.24HzのParzenウィンドウで平滑化を行った。そして、Fukushima et al. (2016)と同様の方法でQsを算出した。次に、JMA2001の速度構造(上野・他、2002)に基づき地中観測点への地震波の入射角を計算し、鉛直入射とみなせる1を満たす地震から求めたデコンボリューション波形を重合し,観測デコンボリューション波形を求めた。そして、求めたQs値と水平成層速度構造に対する理論デコンボリューション波形を計算し,MCMC法で1万回モデルを更新し,重合デコンボリューション波形をよく説明する1次元S波速度構造を推定した。検層データを参考に7層を設定し,S波速度構造を求めたところ、深さ1500mまでは約400m/sから1000m/s、それより深い領域は2000m/sを超えるS波速度が求められた。今後はMCMC法のパラメータを調整し、斜め入射の地震も用いて構造の同定の精度をさらに高める予定である。また、他の観測点の解析を進めることなども検討している。
謝辞:本研究の解析に際して、国立研究開発法人防災科学技術研究所の基盤強震観測網KiK-netの波形を使用させていただきました。
本研究では、デコンボリューション波形の入射波と反射波部分を分離できるよう、検層データから計算したS波理論往復走時が0.5秒以上であるCHBH10(千葉)観測点を選び,震央距離150km以下、最大加速度100gal以下の地震波形データを使用した。まず地中記録のS波初動時刻を読み取り、そこから20秒間の時刻窓を設定した.この時間窓の地中記録を同じ時間窓の地表記録でデコンボリューションした。計算は周波数領域で行い,スペクトルの安定化のために、幅0.24HzのParzenウィンドウで平滑化を行った。そして、Fukushima et al. (2016)と同様の方法でQsを算出した。次に、JMA2001の速度構造(上野・他、2002)に基づき地中観測点への地震波の入射角を計算し、鉛直入射とみなせる1を満たす地震から求めたデコンボリューション波形を重合し,観測デコンボリューション波形を求めた。そして、求めたQs値と水平成層速度構造に対する理論デコンボリューション波形を計算し,MCMC法で1万回モデルを更新し,重合デコンボリューション波形をよく説明する1次元S波速度構造を推定した。検層データを参考に7層を設定し,S波速度構造を求めたところ、深さ1500mまでは約400m/sから1000m/s、それより深い領域は2000m/sを超えるS波速度が求められた。今後はMCMC法のパラメータを調整し、斜め入射の地震も用いて構造の同定の精度をさらに高める予定である。また、他の観測点の解析を進めることなども検討している。
謝辞:本研究の解析に際して、国立研究開発法人防災科学技術研究所の基盤強震観測網KiK-netの波形を使用させていただきました。