日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 強震動・地震災害

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:栗山 雅之(一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所 地震工学領域)

[SSS14-P19] 微動アレイ探査記録の地震波干渉法処理に基づく表面波群速度の推定—ネパール・カトマンズ盆地における検討—

*林田 拓己1横井 俊明1バッタライ ムクンダ2 (1.国立研究開発法人建築研究所 国際地震工学センター、2.ネパール産業省鉱山地質局 国立地震センター)

キーワード:常時微動、地震波干渉法、表面波、群速度、カトマンズ盆地

地表の異なる2地点で観測された常時微動記録の相互相関処理により観測点間グリーン関数の抽出および表面波群速度の推定を試みる解析手法(地震波干渉法)は、現在国内外を問わず幅広く普及している。一方、同手法の適用事例の多くは深部地盤構造や地殻構造の推定・検証および地震波速度変化のモニタリングに焦点を置いたものであり(観測点間距離:数km~1000km)、地表から数m~数100m程度の浅い地盤構造の推定に着目した同手法の適用事例は少ない(例えば林田・吉見, 2014:津野・他, 2015)。著者らは、2016年12月よりネパールのカトマンズ盆地において深部地盤構造推定のための微動アレイ探査を実施しており、盆地内の複数エリアを対象に広帯域地震計(Guralp社製CMG-40T)による10時間前後の微動アレイ観測記録を取得した(アレイ半径137~1272 m)。本研究では、SPAC法の適用による深部地盤構造の推定(Bhattarai et al., 2017物探学会, 2017地震工学会)に加え、これらのアレイ記録に対して地震波干渉法を適用することで、表面波(Rayleigh波、Love波)群速度の推定可能性および有効性について検討を行った。230m以上の観測点間距離を有する観測点の記録を対象とし、得られた同時刻の連続微動記録を655.36秒のタイムウィンドウで327.68秒ずつずらしながら2地点間の相互相関処理を行った。測定された微動振幅の2値化およびスペクトルホワイトニング処理を行った後に0.8-10Hzのバンドパスフィルタを施し、クロススペクトルの逆フーリエ変換により相互相関関数を導出した(R-R, R-T, R-Z, T-R, T-T, T-Z, Z-R, Z-T, Z-Zの9成分)。スタッキングした相互相関関数を観測点間のグリーン関数と見なし、マルチプルフィルタ解析(Dziewonski et al., 1969)による群速度の推定を行った。推定した群速度は、高周波数帯域側においてSPAC法によって推定された既往の速度構造モデルから導出される群速度とも調和的な傾向を示した。本結果は、地震波干渉法が既往の微動探査結果の検証用ツールとしても有効である可能性に加え、一度の微動アレイ観測によって長波長および短波長領域、Rayleigh波およびLove波といった多様な表面波の特性を同時に検出することが可能であることを示唆している。


謝辞:
本研究は、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)「ネパールヒマラヤ巨大地震とその災害軽減の総合研究(H28年度~32年度)」の下で実施され、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)および独立行政法人国際協力機構(JICA)による支援を受けました。