日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT49] 空中からの地球計測とモニタリング

2018年5月21日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(理学))、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、小山 崇夫(東京大学地震研究所、共同)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)

[STT49-P03] 富士火山北東麓における空中磁気探査結果

*結城 洋一1中山 英二1茂木 透2平田 諒次1プラダン オム1 (1.応用地質株式会社、2.北海道大学)

キーワード:空中磁気探査、富士山、火山

1.はじめに
 富士火山北東麓の,大室山を含む側火山の密集域において,火山防災に寄与しうる表層~深部地質構造の情報を得ることを目的に,空中磁気探査を行った.測定データから,高分解能の磁気異常マップを作成するとともに,3次元インバージョンの手法を適用して深さ1km付近までの3次元磁化強度分布を推定し,既存地質情報との対比を行った.ここでは,これらの結果について報告する.
2.調査範囲・調査方法
 調査範囲は,大室山-片蓋山-長尾山-弓射塚を囲む南西-北東3.5km,北西-南東4kmである.ここに,南西-北東方向に主測線を設定し,北西-南東方向に交差(補助)測線を設定した.主測線は100m間隔で41本,交差測線は1,000m間隔で3本である.
 測定は,geometrics社製センサーをヘリコプターから曳航し、対地高度70~100m(磁気センサーの対地高度50~80m)で飛行して磁気(全磁力)データを取得した.同時に地上の定点において,地磁気の日変化を測定した.
3.高分解能磁気異常マップの作成
 現地で取得された磁気データに対して,日変化補正,スパイク除去・フィルタ処理,mistie levelling(交点補正),microlevelling,IGRF補正,極磁気変換の一連の処理を行った後,10mメッシュに格子化して磁気異常マップ(IGRF残差分布および極磁気異常分布)を作成した.
4.3次元インバージョン
 調査範囲の深さ1kmまでの領域(3.5km×4km×1km)を,200m×200m×150m(7層)の直方体分ロックに分割して,個々のブロックの平均磁化強度を推定する方法で,磁化強度の3次元分布を求めた.領域内のブロック数は3,079個であるが,解を安定させるため側方に拡張して総ブロック数5,091個で解析を行った.Grauchの相関法から,調査地域内に露出する岩石(火山噴出物)の平均磁化強度は3.83A/mと計算された.そこで,この平均磁化強度の値を用いてIGRF残差(格子化する前の測線データ)に地形補正を施して入力値とした.
5.結果
 得られた磁気異常マップから,以下のような特徴が認められた.
(1)大室山,片蓋山,イガドノ山は+500nTを超える顕著な高磁気異常であり,長尾山,弓射塚や大室山-片蓋山の間にある側火山はそれほどの高磁気異常にはなっていない.
(2)大室山東部と,調査地域南端の片蓋山南部-片蓋山南部にかけての範囲は,帯状の中程度の高磁気異常域となっている.前者は大室山東溶岩湖,後者は御庭奥庭第二溶岩流の分布域に対応する.
(3)調査範囲のほぼ中央部に,北西-南東方向に伸長する帯状の低磁化強度域が存在する.大室山東方で(2)の高磁気異常域が重畳するが,低磁化強度域としては北西端から南東端まで連続しているように見える.南西側は,氷穴火口列の位置に相当する.
6.まとめ
 3次元磁化強度分布では,およそ深さ200~300m付近を境に,それ以浅と以深で構造に顕著な違いがあることが示された.これは,調査範囲から北東側に300mほど離れた鳴沢観測井において,上位の新富士火山噴出物と下位の古富士火山噴出物の境界が深さ196mにある(宮路ほか,1995)ことを考慮すると興味深い.
 このような磁気異常分布・3次元磁化強度分布の特徴を整理し,地質と対比することで,地下の構造をより明確に理解でき,火山防災に有益な情報が得られると期待できる.