日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT50] 地震観測・処理システム

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:吉見 雅行(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

[STT50-P02] 超磁歪震源による高空間解像度地下モニタリング

*國友 孝洋1,2石井 紘1浅井 康広1 (1.公益財団法人 地震予知総合研究振興会 東濃地震科学研究所、2.名古屋大学大学院環境学研究科附属地震火山研究センター)

キーワード:超磁歪震源、浅部地下構造変化

超磁歪素子を利用したアクチュエータは、変位は小さいが発生応力が大きく、扱いが簡便なため、高周波用の人工震源装置としての活用が期待される。2017年の連合大会では、GPS同期で任意波形が発生できるシングルフォース型(最大発生力91kgf)の超磁歪震源を開発したこと、 700m先のボアホール地震計で熊本地震(2016年4月16日 M7.3)によるP波走時のステップ状遅延を検出したことを報告した。また、その後の変化が、瑞浪超深地層研究所立坑内観測点 STG200Nで測定している間隙水圧の変化と良く相関しており、間隙水圧変化によるクラックの開閉が土岐花崗岩内のP波速度変化を支配していることを議論した。一方、土岐花崗岩の上位にある瑞浪層群の地下構造変化を調べるために、2016年8月に瑞浪地殻変動観測壕内に設置した地震計アレイにより観測を行っている。本講演では、瑞浪層群内で大きく変動する部分の存在を示していると考えられる反射フェーズについて議論する。
実験場所は、中新世の堆積岩である瑞浪層群の中に掘削された坑道内 (瑞浪地殻変動観測壕)である。約90m下には土岐花崗岩との不整合面がある。超磁歪震源は、5kgの重錘を上下加振するタイプである。送信制御信号は、周波数の異なる多数の正弦波を合成した電流波形を用いた。超磁歪アクチュエータには最大電流制限があるため、合成後の最大振幅が極力小さくなるように各周波数の正弦波の位相を調整した。送信周波数帯域は、2016年8月10日から2017年8月8日までは100.5Hz~200.5Hz(1Hz間隔)、2017年9月14日以降は100.5Hz~300.5Hz(1Hz間隔)である。固有周波数8Hzの上下動ジオフォン12台を5.4m間隔で設置し、総延長約65mの小アレイを構築した。記録計にはSC-ADH10K(4ch)を3台用い、サンプリング周波数1kHzで連続記録を取得した。1日間スタックした観測スペクトルを送信スペクトルでデコンボリューションし、時間領域に変換することで、グリーン関数を計算した。送信スペクトル(発生力)には、重錘に取り付けた加速度計のデータを用いた。
地下坑道内に設置された上下加振の超磁歪震源からは、主として、水平方向にSV波が、上下方向にP波が放射される。まず、約1年分のデータが蓄積できている100.5Hz~200.5Hzの帯域について議論する。P波初動(見かけ速度約2300m/s)、屈折SV波(1000m/s)、直接SV波(800m/s)および花崗岩上面反射SV波と考えられるフェーズは、波形変化が小さく、約1年分のグリーン関数を重ね書きしても、ほぼ一本の曲線に見える。一方、瑞浪層群内からの反射波であると考えられる後続SV波は波形の変化が大きく、グリーン関数を重ね書きすると太い曲線となる。距離103mの観測点の0.15s付近のフェーズは特に変化が大きい。このフェーズは、前後の走時のフェーズが変化していないことから、観測点近傍の変化ではなく瑞浪層群内の特定の箇所の変化であると考えられる。2016年11月~2017年6月までは波形・振幅ともに安定しているが、その前後の夏場はフェーズが不明瞭になるなど大きく変化している。年周変化と見られるが、変化のタイミングは、降雨量とは対応していない。2017年9月14日以降の帯域を拡げた実験では、フェーズが2つに分離しており、変化の箇所や原因についてより詳細な議論を行いたいと考えている。