[SVC41-P27] 箱根カルデラ内の早川河川床砂化学組成にみられる火山活動の影響
キーワード:箱根火山、地球化学図、元素組成、主成分分析
【諸言】
日本列島には,111の活火山が分布している.活火山の定義は,概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山である(火山噴火予知連絡会会報第84号).しかし,有史の噴火履歴が無く,現在,噴気活動がない静穏な活火山も存在する.静穏な活火山であっても将来,噴火の可能性はある.火山防災を考える上で,静穏な活火山が,今後,どのように活動するかについて予測することは重要である.火山活動は,過去の活動に類似する可能性は高い.よって,噴気活動が見られない静穏な火山であっても,過去の噴気活動の場所を特定することは,将来発生する火山活動を予測する上で有用である.活火山において,過去に存在した噴気活動の影響の痕跡が,河川床砂に残されている可能性がある.河川床砂は上流地域の地殻表層の元素濃度を代表しており,元素の濃度分布図である地球化学図の作製に用いられてきた.本研究では,現在,噴気活動が存在する箱根山のカルデラ内を流れる早川本流および支流の河川床砂が噴気活動にどのような影響があるのか多変量解析(主成分分析)を用いて調べる.
【実験・操作方法】
箱根カルデラ内を流れる早川の本流および支流の11ヶ所で砂を採取した.河川床砂を約1kgシャベルなどで採取し,乾燥させた後,篩分けし,細粒(0.30~0.85mm)および粗粒(0.85~1.7mm)の粒子を得た.次に磁石を用い,篩分けた試料から,磁鉄鉱など磁性を持つ物質を取り除いた後,純水で超音波洗浄をした.これを瑪瑙の乳鉢で粉砕し,6M HClO4溶液 0.15mL,25M HF溶液 0.30mLを用いて溶解した.更にこの溶液を120℃で6時間,170℃で6時間放置し,200℃で蒸発乾固するまで加熱し,放冷した.これに10M HCl 溶液0.20mLを加え,再度120℃で蒸発乾固するまで加熱し,放冷した.最後に0.5M HNO3溶液 5.00mLで試料を溶解させ全容を25mLまで0.5M HNO3溶液を加え,試料原液とした.この原液を適宜希釈し,ICP-MS(Thermo Fisher Scientific, iCAP Q)で分析した.分析した結果を多変量解析(主成分分析)で解析した.
【結果・考察】
11ヶ所の砂の分析値を主成分分析した結果,第1主成分は,Sc,V,Y,ランタノイドに強い正の相関を示した.一般に花崗岩類はSc,Y,ランタノイドといった希土類元素に富む傾向があることから,それらの影響を反映しているものと考えられる.また,第2主成分は,Mg,Al,Ca,Ti,Mn,Fe,Sc,Vに正の相関,Na,Kに負の相関を示した.主要元素の性質を反映しているものと考えられることから,箱根カルデラ内周辺地域の岩石の種類を示しているものと考えられる.ScとVについては,第1,第2主成分両方に正の相関を有する.早川本流の砂は,日本列島における若い地殻上部化学組成(Togashi et al.,2000)と比較してSc,Vの濃度が高く火山灰が卓越する地域(主に東日本)の特徴と一致しており(宮崎 ,2016),このことから第2主成分は火山灰の影響を受けていると考えられる.
【参考文献】
気象庁(2003): 火山噴火予知連絡会会報(第84号).,p101.
Togashi,S.,Imai,N.,Okuyama-Kusunose,Y.,Tanaka,T.,Okai,T.,Koma,T.,Murata,Y. (2000): Young upper crustal chemical composition of the orogenic Japan Arc,
Geochemistry,Geophysics,Geosystems.,1, 2000GC000083.,p.18-19.
宮崎 遼(2016):東海大学理学部化学科,平成27年度卒業論文.,p29.
日本列島には,111の活火山が分布している.活火山の定義は,概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山である(火山噴火予知連絡会会報第84号).しかし,有史の噴火履歴が無く,現在,噴気活動がない静穏な活火山も存在する.静穏な活火山であっても将来,噴火の可能性はある.火山防災を考える上で,静穏な活火山が,今後,どのように活動するかについて予測することは重要である.火山活動は,過去の活動に類似する可能性は高い.よって,噴気活動が見られない静穏な火山であっても,過去の噴気活動の場所を特定することは,将来発生する火山活動を予測する上で有用である.活火山において,過去に存在した噴気活動の影響の痕跡が,河川床砂に残されている可能性がある.河川床砂は上流地域の地殻表層の元素濃度を代表しており,元素の濃度分布図である地球化学図の作製に用いられてきた.本研究では,現在,噴気活動が存在する箱根山のカルデラ内を流れる早川本流および支流の河川床砂が噴気活動にどのような影響があるのか多変量解析(主成分分析)を用いて調べる.
【実験・操作方法】
箱根カルデラ内を流れる早川の本流および支流の11ヶ所で砂を採取した.河川床砂を約1kgシャベルなどで採取し,乾燥させた後,篩分けし,細粒(0.30~0.85mm)および粗粒(0.85~1.7mm)の粒子を得た.次に磁石を用い,篩分けた試料から,磁鉄鉱など磁性を持つ物質を取り除いた後,純水で超音波洗浄をした.これを瑪瑙の乳鉢で粉砕し,6M HClO4溶液 0.15mL,25M HF溶液 0.30mLを用いて溶解した.更にこの溶液を120℃で6時間,170℃で6時間放置し,200℃で蒸発乾固するまで加熱し,放冷した.これに10M HCl 溶液0.20mLを加え,再度120℃で蒸発乾固するまで加熱し,放冷した.最後に0.5M HNO3溶液 5.00mLで試料を溶解させ全容を25mLまで0.5M HNO3溶液を加え,試料原液とした.この原液を適宜希釈し,ICP-MS(Thermo Fisher Scientific, iCAP Q)で分析した.分析した結果を多変量解析(主成分分析)で解析した.
【結果・考察】
11ヶ所の砂の分析値を主成分分析した結果,第1主成分は,Sc,V,Y,ランタノイドに強い正の相関を示した.一般に花崗岩類はSc,Y,ランタノイドといった希土類元素に富む傾向があることから,それらの影響を反映しているものと考えられる.また,第2主成分は,Mg,Al,Ca,Ti,Mn,Fe,Sc,Vに正の相関,Na,Kに負の相関を示した.主要元素の性質を反映しているものと考えられることから,箱根カルデラ内周辺地域の岩石の種類を示しているものと考えられる.ScとVについては,第1,第2主成分両方に正の相関を有する.早川本流の砂は,日本列島における若い地殻上部化学組成(Togashi et al.,2000)と比較してSc,Vの濃度が高く火山灰が卓越する地域(主に東日本)の特徴と一致しており(宮崎 ,2016),このことから第2主成分は火山灰の影響を受けていると考えられる.
【参考文献】
気象庁(2003): 火山噴火予知連絡会会報(第84号).,p101.
Togashi,S.,Imai,N.,Okuyama-Kusunose,Y.,Tanaka,T.,Okai,T.,Koma,T.,Murata,Y. (2000): Young upper crustal chemical composition of the orogenic Japan Arc,
Geochemistry,Geophysics,Geosystems.,1, 2000GC000083.,p.18-19.
宮崎 遼(2016):東海大学理学部化学科,平成27年度卒業論文.,p29.