日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC41] 活動的火山

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、青木 陽介(東京大学地震研究所、共同)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC41-P31] 伊豆大島火山における1m深地温測定

*石原 昂典1鬼澤 真也2平山 康夫1 (1.気象庁、2.気象庁気象研究所)

キーワード:伊豆大島、火山、地中温度

1.はじめに
伊豆大島1986年噴火では,噴火前の火口内熱異常域の拡大や,噴火後のカルデラ縁での噴気の出現などが観測された.次期噴火での前駆現象の検出を目指すとともに熱活動の推移を把握する上でも,現在の熱活動を理解しておく必要がある.
気象庁では,定期的な三原山噴気地における地温測定,熱赤外による火孔内の温度測定を実施しているものの(柳澤・他, 2016),カルデラ域を含む面的な熱異常の把握は,2008年1月の空中熱赤外観測以降実施できていない.ここでは,伊豆大島カルデラ域の現在の面的な熱異常分布を把握することを目的として,1m深地温測定を実施した.また併せて1m深地温への気象等の影響を把握することも目的とした.


2.観測
現在も噴気活動などの地熱兆候の認められる三原山,カルデラ南部領域を対象とし,10月27日及び11月16日から24日にかけて測定を実施した.杭により地中に小孔を開けた後,T型熱電対温度計を差し込んで測定した.極力平衡に達するため,すべての測定点において設置後30分以上経過した後に温度測定を行った.測点数は計124点である.また測定時期の影響を把握するために,測定期間中,カルデラ内に参照点を設置し,その時間変化も記録した.


3.結果
時間変化
参照点における測定結果からは以下のことが読み取れる:1) 10月27日の測定と11月16日以降とで,およそ1℃の地温低下が認められる,2) 11月16日から22日まで,0.7℃程度の温度低下が認められる,3) 山麓にて計99mmの降水が記録された23日以降,およそ2日にわたり地温低下が認められ,その変化量はおよそ2℃に達する,4) 0.7℃程度の日変化が認められる.
福富 (1951)に指摘されているように,測定時期による温度低下が認められた.ただし,地温の低下には,降水の浸透が大きく影響していることが示唆される.また,一般に1m深では,地温の日変化は抑制されるとされるが,浸透性が高いと推察されるスコリア質の表層では気温の日変化の影響を除ききれないことを示しているのかもしれない.

空間分布
三原山を含む南部カルデラ地域で測定された1m深地温の分布は,大局的には既存の噴気地の分布から期待されるものであった.すなわち,およそ20℃以上の地温が観測された地域は,三原山火口北東側および南西側,櫛形山下の現在噴気が認められる地域とその周辺である.また,カルデラ南西縁においても31.6℃の地温が観測されたカルデラ南西縁は,1986年噴火後に噴気が確認された地域に相当する.
これらの地域の周囲にはおよそ12℃~15℃程度の地域が分布しており,今回の測定標高(およそ500m~750m)および測定時期での標準的な地温と推察される.これは,海岸沿い標高16mの地点で測定された18.1℃より低く,福富 (1951)の指摘するような標準地温の標高の影響があると考えられる.
なお,降水後に測定されたデータでは周囲より大きく地温が低い地点があり,仮に参照点で測定された地温低下分を考慮しても十分に補正しきれない.このことは,降水による温度低下の影響が測定地点毎に異なっていることを示唆している.