日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC41] 活動的火山

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、青木 陽介(東京大学地震研究所、共同)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC41-P51] 溶岩流の地形解析によるマグマ噴出時の粘性率の推定

*岡崎 健人1鍵山 恒臣1 (1.京都大学)

キーワード:溶岩流、マグマ、粘性率、アスペクト比

火山の噴火様式や溶岩が生み出す地形はマグマの粘性率によって大きく変化するため,火山の研究をする上で噴出された溶岩流の粘性率を調べることは意義のあることである.溶岩流の粘性率を決定する要素の一つに岩石組成があり,これを用いて粘性率を計算する手法はShaw (1972)によってその原型が提案されている.しかし,溶岩が生み出す地形の中には似た化学組成を持つにも関わらず地形が大きく異なっているものがあり,その理由として結晶度や水の含有の違いなどを指摘する研究も行われている(Sato et al., 2013).このとき,岩質から予想される粘性率と実際の溶岩地形から推定される粘性率の違いが明らかになるのであれば,その違いを生み出す理由を明らかにすることで噴火前に粘性率が変化する要因を調べる手助けにもなりうる.

本研究は火山噴火によって形成された溶岩流地形の地形学的特徴に焦点を当て,そこから噴出時の粘性率を推定する手法を確立し様々な火山で噴出時の粘性率を復元することを目的としている.



地形から粘性率を計算する式についてはStevenson et al. (1994)など過去の研究において提示されているが,今回は地形の物理学的パラメータに関する値として,溶岩流の厚さを溶岩流の面積の平方根で割ることで得られるアスペクト比を用いた.Ishihara et al. (1990)をもとに東京大学地震研究所が公開している溶岩流シミュレーションの結果からアスペクト比を計算し,溶岩流シミュレーションを使用して,溶岩噴出時の温度や粘性率,地面の傾斜,溶岩の噴出率を変えて数値実験を行い,形成された溶岩流のアスペクト比と噴出時の粘性率との関係式を求めた.


次にこの関係式を実際の溶岩流地形数ヶ所に適用した.その結果,噴出率の違いによる誤差は1桁程度であり,有用であることが確かめられた.また,溶岩流のアスペクト比から推定された粘性率と岩石組成から推定される粘性率を比較すると,両者の比(アスペクト比から求めた粘性率/岩石組成から求めた粘性率)は高粘性マグマになるほど大きくなった.その理由として,高粘性マグマほど噴出温度が低くなっていることが考えられる.また,Sato (2005)の研究によれば,溶岩の結晶度によって,この比が大きくなることが指摘されている.上記の結果に結晶度の効果を加えると文献値に近い結果が得られ,おおよそ説明できることが分かった.しかし,個々の溶岩流においてはまだ十分に説明できないので,今後,水の成分比や発泡度などの効果も検討していく必要がある.