[SVC43-P04] 伊豆諸島新島西暦886年向山火山の噴火推移と外来水の影響
キーワード:火砕密度流、火砕丘、外来水、爆発的噴火
伊豆諸島新島西暦886年の向山火山の噴火活動では,二種類の流紋岩質火砕堆積物である羽伏浦火砕堆積物と大峯火砕丘が連続して噴出した.羽伏浦火砕密度流堆積物は約40枚の単層からなり,それらは軽石と石質岩片を含む.これらの単層は三種類の特徴的な岩相,岩相A,岩相B,岩相Cに分類される.岩相Aは淘汰が悪く塊状で,細粒物は枯渇している.岩相Bは級化構造もしくは弱いラミナを示し,細粒物に富む.岩相Cは巨大な軽石が集積している.大峯火砕丘は淘汰が悪く塊状の層が成層し,それらは軽石とガラス質の岩片を含み,石質岩片はあまり含まれない.羽伏浦火砕密度流堆積物と大峯火砕丘は共に外来水による急冷を示唆する,火山灰粒子や急冷節理の発達した軽石岩塊を含む.羽伏浦火砕密度流堆積物中の軽石の密度(岩相A 1.03 g/cm3,岩相B 1.22 g/cm3,岩相C 0.83 g/cm3)は大峯火砕丘中の軽石の密度(1.61 g/cm3)よりも小さい.また,本質岩片の定置温度は岩相Aと岩相Cは最大300℃,岩相Bは常温を示し,大峯火砕丘では最大400℃とより高い定置温度を示す.
これらの結果より,羽伏浦火砕密度流堆積物と大峯火砕丘は堆積物が火口近傍においてマグマの温度よりも十分に低温で定置し,外来水による急冷を示唆する軽石や火山灰が含まれることから,高温の本質物質と外来水の爆発的な相互反応により発生したことが示唆される.羽伏浦火砕密度流堆積物は,火道上昇中の発泡した本質物質が十分な外来水と接触し,火道周辺の基盤岩を取り込む爆発的な噴火により発生し,300℃から常温の低温で定置したと推定される.大峯火砕丘は,羽伏浦火砕密度流と比較し発泡度が低下したマグマが溶岩ドームを形成し,クレーター内の外来水と接触することで爆発が生じたと推定される.その結果ガラス質の本質物を多く含み,石質岩片をあまり含まない400℃以下の火砕密度流が生じ,大峯火砕丘を形成したと考えられる.
これらの結果より,羽伏浦火砕密度流堆積物と大峯火砕丘は堆積物が火口近傍においてマグマの温度よりも十分に低温で定置し,外来水による急冷を示唆する軽石や火山灰が含まれることから,高温の本質物質と外来水の爆発的な相互反応により発生したことが示唆される.羽伏浦火砕密度流堆積物は,火道上昇中の発泡した本質物質が十分な外来水と接触し,火道周辺の基盤岩を取り込む爆発的な噴火により発生し,300℃から常温の低温で定置したと推定される.大峯火砕丘は,羽伏浦火砕密度流と比較し発泡度が低下したマグマが溶岩ドームを形成し,クレーター内の外来水と接触することで爆発が生じたと推定される.その結果ガラス質の本質物を多く含み,石質岩片をあまり含まない400℃以下の火砕密度流が生じ,大峯火砕丘を形成したと考えられる.