日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 104 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)、座長:小森 次郎(帝京平成大学)

15:30 〜 15:45

[G03-01] 土木工学と地球惑星科学を融合させた防災・キャリア教育への挑戦
-学校設定科目「環境防災フィールドワークA/B/C」(各1単位)-

*藤原 靖1鈴木 大1 (1.神奈川県立向の岡工業高等学校 定時制・総合学科)

キーワード:土木工学、環境防災、フィールドワーク、キャリア教育、学校設定科目、高等学校次期学習指導要領

1 はじめに  
 中央教育審議会 教育課程企画特別部会(2016.8.1)では、次期学習指導要領での改定の方針として次のことを示している。
○現行学習指導要領に基づく真摯な取組が、改善傾向にある国内外の学力調査の結果などに表れてきている一方で、判断の根拠や理由を示しながら自分の考えを述べることや、社会参画の意識等については課題。持続可能な開発のための教育(ESD)等の考え方も踏まえつつ、社会において自立的に生きるために必要な「生きる力」を育むという理念のさらなる具体化を図るため、学校教育を通じてどのような資質・能力が身に付くのかを、以下の三つの柱に沿って明確化
(1) 生きて働く「知識・技能」の習得
(2) 未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成
(3) 学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性」の涵養

 本校・定時制は、平成19年度に総合学科への改編以降、理科として「天文学概論」・「多摩川の自然」、工業として「環境問題入門」といった学校設定科目を設置しており、「地学基礎」「地球環境化学」を含め、地球惑星科学系の科目への生徒たちの学習ニーズは高い。また、私たちが着任した平成26年度に、部活動・地球惑星科学同好会が設立、平成28年度には部へ昇格した。
 生徒たちの学習ニーズに応えるとともに、上記・次期学習指導要領の方針を踏まえた資質・能力の育成を図る、平成28年度より2~4年次を対象とした、教科「理数」・科目「環境防災フィールドワークA」「(同)B」「(同)C」(各1単位・学校設定科目・短期集中科目)を開設することとした。これら科目は、教諭(理科)藤原と教諭(工業)鈴木のティームティーチングで担当する。教諭(理科)藤原により地球惑星科学領域から上記の資質・能力の柱の(3)を主に、教諭(工業)鈴木により土木工学領域から(1)を主に担当することで、これら三つの柱を有機的に培わせられると考えた。

2.環境防災フィールドワークA
(1)目的
 フィールドワークを通して、地域の環境防災課題を科学的な現象や事象からとらえ、自然環境と社会生活について観察・考察するとともに、これらの関係について理解を深め、科学的な自然観を育成する。

(2)内容
 持続可能な社会への課題について、フィールドワーク、表現

(3)実施内容(平成28年度「神奈川とプレートテクトニクス」)
 事前学習2時間と、夏季休業期間5日を用いて、かわさき宙と緑の科学館 川島逸郎氏・大泉文人氏をはじめとする職員の皆様、神奈川県立生命の星・地球博物館 門田真人氏・笠間友博氏のご協力により、神奈川における固体地球的な環境をフィールドワークと実験・観察から深めていった。
 藤原・鈴木(2016)で詳細を報告している。

3.環境防災フィールドワークB
(1)目的
 フィールドワークと環境防災について研究している博物館・大学などの研究機関、企業の見学・活用を通して、環境防災課題を科学的な現象や事象としてとらえて、環境防災を研究する方法を学ぶ。そのなかで「科学」研究をする意義を学ぶ。

(2)内容
 持続可能な社会への課題について、フィールドワークと研究機関・企業の活用、表現

(3)実施内容(平成29年度「水利用と環境防災」)
 事前学習2時間と、夏季休業期間5日を用いて、実施した。2日間は、川崎市環境局総務部環境調整課 環境教育・生物多様性担当 浅岡 充 氏により、高津区流域地形地図などを用いて、川崎市高津区内の浸水被害箇所や水災害箇所などについて案内いただいた。その後、国立研究開発法人 港湾空港技術研究所、東京消防庁本所都民防災教育センターの見学を通して、水災害の原因と対策について、理解を深めていった。
 関東地方ESD活動支援センター(2017.8.15)で前半の詳細を報告いただいた。

4.環境防災フィールドワークC
(1)目的
 フィールドワークを通して、環境防災課題を科学的な現象や事象としてとらえて、観察・実験に取り組み、仮説の設定、調査の計画、調査による検証、データの分析・解釈など探究の方法について習熟することにより、科学的な思考力、表現力を育てる。

(2)内容
 持続可能な社会への課題について、フィールドワークと探究、表現

(3)実施内容
 平成30年度実施内容は、未定である。

参考文献
・中央教育審議会 教育課程企画特別部会(2016.8.1):第19回配付資料(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/053/siryo/1375316.htm)
・関東地方ESD活動支援センター(2017.8.15):【寄稿】環境と防災のフィールドワーク~気候変動適応策を学ぼう~(http://kanto.esdcenter.jp/cont170720/)
・藤原 靖・鈴木 大(2016):土木工学と地球惑星科学を融合させた防災・キャリア教育への挑戦―学校設定科目「環境防災フィールドワークA」(1単位)の実践報告―. 第46回関東理科教育研究発表会千葉大会要項・研究発表資料,74-75.