日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 104 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)、座長:小森 次郎(帝京平成大学)

16:15 〜 16:30

[G03-04] 六甲山の地質特性がもたらした阪神間の災害と産業

★招待講演

*先山 徹1 (1.兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)

キーワード:防災教育、地学教育、六甲山地、花崗岩

六甲山地は主として白亜紀末花崗岩類(六甲花崗岩)で構成され,1Ma以降の断層運動で隆起した山地である(藤田・笠間,1982・1983).この活断層の動きは1995年に兵庫県南部地震を発生させ,急傾斜の地形と崩れやすい花崗岩の存在は,1938年の阪神大水害をはじめ,麓の街に大規模な土石流災害をもたらした.しかしその一方で六甲山地は山麓の街に多くの恵みを与えてきた.その一つに六甲花崗岩の採石があげられる.六甲山麓から採石された花崗岩石材は特に中世から近世にかけて西日本各地に流通し,その石材名「みかげ石」は花崗岩の代名詞となっている.現在,山麓には大坂城築城の際に切り出された,矢穴や刻印のある花崗岩塊が多く残されているが,その分布は過去の土石流堆積物中の花崗岩塊が石材として使用された可能性を示している.頻繁に起こる土石流が地域を花崗岩石材の産地とし,独特の明るい阪神間の街並みが作り出された.
そのほか,六甲山麓の急流を利用した水車による菜種油や酒造り,断層地形が作った天然の良港,隆起準平原を活用したリゾート,異人館や洋菓子店など,多くの恵みをもたらし,独特の街と文化を誕生させた.このように災害をもたらす地質現象はしばしば我々に多くの恵みをもたらし,人々は災害とうまく付き合いながら暮らしてきた.地質現象に災害と恩恵の二面性があり,そのうえで人々の暮らしが成立してきたことを理解することは防災教育の基本となる.