日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)

[G03-P03] 自然現象・自然災害としての雷理解および雷との付き合い方:スカイプを活用したフィリピン・ヴィサヤ地域在住の若者への聴き取り調査結果

*伊藤 孝1 (1.茨城大学教育学部)

キーワード:雷、聴き取り調査、ヴィサヤ、災害文化、スカイプ

雷を自然災害として捉えた場合,雷はそれほど大きな脅威とはいえないかもしれない。フィリピンを例にとると,年間で死者13名(2013年),5名(2014年)と,自然災害を原因とする死亡事故の2%にみたない(Philippine Statistics Authority,2015)。また,フィリピン・ヴィサヤ地域在住の若者を対象とした自然災害に関する聴き取り調査(伊藤,2017,2018)からも,若者自身,雷を恐ろしい自然災害としては捉えられていない。しかし,ヴィサヤ地域には雷に対する古い慣習も残り(Olofson, 2002),雷を災害文化として捉えると極めて興味深い。本研究では,伊藤(2017,2018)と同様の手法により,ヴィサヤ地域を対象地域として,当地で生活する若者が,子どもの頃からどのように雷と付き合ってきか,また現在どのように対処しているか,という点を明らかとすることを目的とした。 聴き取り調査は,インターネットを介したオンライン対面通話形式(伊藤,2017,2018)で,一対一で筆者自身が行った。調査期間は, 2016年9月~2018年2月の約1年半,聴き取り対象者は,オンライン英会話の講師約120名である。質問は以下の10項目であり,口答で質問しその場で回答を得た。質問1~3は子どもの頃の経験,質問4以降は現在の理解・状況についての問いである。また,質問1以外は,激しい雷が近づいているときという状況が前提である。 1. 子供の頃,雷雨が上がったあと,白い石を探しにいったことはありますか? 2. 子供の頃,笑うな(歯を見せるな)と言われたことはありますか? 3. 子供の頃,猫(その他の動物)と遊んではいけない,と言われたことがありますか? 4. 家のなかの鏡を布で覆いますか? 5. テレビの画面を布で覆いますか? 6. 携帯電話・スマートフォンの電源を切りますか? 7. 傘を差して出歩くことは危険と考えますか? 8. 木の下に避難することは危険と考えますか? 9. テレビを消しますか? 10. テレビを消し,さらに電源のコンセント,もしくはアンテナケーブルを外しますか? まず,子どもの頃の経験についてであるが,雷雨が上がったあと白い石を探した経験があるもの,また雷が近づいたとき猫と遊ぶな・猫に触れるなと注意をされた経験をもつものは,いずれも約15%に留まった。一方,笑うな・歯を見せるなと注意された経験を有するものは多く,約半数に登る。笑ったり歯を見せたりしてはいけない理由として,歯が雷を呼び込むから,と説明されていたものが大半である。 雷が近づいた際,家のなかにある鏡を隠す理由も,上で示した歯を隠すことと同様,鏡が雷を呼び込むという理解である。この雷時に家のなかの鏡を隠すという行動の浸透度は世代によって差があり,インタビューアーの親の世代では70%を超え,インタビュー対象者は約50%であった。セブには雷の際,鏡を隠すという風習があることは,Olofson (2002)でも紹介されているが,世代を経て著しく廃れていることがわかった。 雷が近づいている際,テレビを消すが90%,テレビを消しコンセントを抜くが80%,木の側に隠れることが危険と考える人が65%となった。電気製品を切り電源ケーブルをコンセントから抜くことは,雷の高電圧が室内に入ってくることを防ぐ(日本大気電気学会,2001)ことから,電気製品の被害を減らし,かつ感電事故を防ぐ,安全面からも理にかなった行動と思われる。また,高い木から離れることは,落雷した木からの側撃雷を防ぐ(日本大気電気学会,2001)という点で,避難行動として,やはり理にかなっている。以上,科学的な根拠に準じた雷に対する行動指針も深く浸透していることがわかる。一方,テレビを消しコンセントも抜くと答えた人のうち,部屋のなかにある鏡を隠すと答えた人は54%にも登った。このように,フィリピン・ヴィサヤ地域では,現時点において,土着的な習慣と科学に裏打ちされた安全行動が同居していることが認められた。