日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)

[G03-P04] ハザードマップを用いた火山防災教育―福島県郡山市安積黎明高等学校の事例―

*船引 彩子1鈴木 佑2久保 純子2根本 靖彦3 (1.東京理科大学、2.早稲田大学、3.安積黎明高校)

キーワード:ハザードマップ 、防災教育、福島県、安達太良山、地学基礎、高等学校

ハザードマップとは、将来生じるであろう災害の範囲や被害状況を予測した地図であり、過去の災害記録や地形・地質などをふまえ、自然災害の種類別に作られ、その地域に暮らす住民の災害に対する意識を高めたり、災害発生時にとるべき行動を考えたりする際に有効であるとされている。現在、ハザードマップに関しては高校の地学や地理で取り上げられており、防災教育の一環として利用されることが多い。本研究では、ハザードマップの学習成果や一般的な地学教育との関連付けについて検証するため、ハザードマップの学習を行う前後の高校生にアンケートを行い、その結果について考察した。

対象とした福島県立安積黎明高等学校は、福島県郡山市の中心部に位置し、県内でも有数の進学校である。現在は文系コースの2年生の生徒を対象に1年間、「地学基礎」の授業が行われている。授業では火山災害に関する映像なども積極的に利用し、2年生の最後にはハザードマップを用いた火山防災の授業も行われている。アンケートは2017年12月に、ハザードマップを用いた防災の授業を前年度に受けた3年生と、学習前の2年生の両学年の生徒に対して行われた。

アンケートに回答した生徒の出身地は、郡山市が大多数を占めるが、近隣の須賀川市や本宮市などからの生徒も若干数確認できた。生徒たちの出身地に影響を及ぼすことが考えられる火山災害は、福島県中通り地域に位置する安達太良山による火山災害である。自治体の発行する安達太良山の火山ハザードマップを確認すると、降灰の範囲、降灰後の土石流や融雪による泥流などの直接的な被害の範囲は主に火山山麓の玉川村や本宮市に集中し、郡山市でも被害を受けることが考えられるのは、北部の熱海地区など限られた地域である。

生徒たちのアンケート回答結果を見ると、福島県内の活火山で知っているものとして2年生では安達太良山に比べ磐梯山をあげる生徒が多かった。また、「火山災害で知っているもの」としてあげられたのは、両学年とも火山灰が最多であったが、3年生では火砕流や土石流などの割合が増えた。一方で、「自宅が火山災害の被害に遭うと思うか」と聞いたところ、3年生はハザードマップで被害が及ぶ可能性がある地域を学習したのにも関わらず、広範囲の地域出身の生徒が「被害に遭うと思う」と答えていた。本報告ではこのようなアンケート結果のデータを示し、高校「地学基礎」の中でのハザードマップを用いた防災教育の課題について議論する