日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 地球惑星科学のアウトリーチ

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 104 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、小森 次郎(帝京平成大学)、長谷川 直子(お茶の水女子大学、共同)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)、座長:大木 聖子萩谷 宏

11:15 〜 11:30

[G04-09] 高校生による「防災小説」の他者への効果——日台での調査を踏まえて

*山口 航平1松尾 壮一郎1岡本 理依1ツァオ イーウェン大木 聖子1 (1.慶應義塾大学)

キーワード:防災、教育、地震

文部科学省は,高等学校等におけるグローバル・リーダー育成に資する教育を通して,生徒の社会課題に対する関心と深い教養,コミュニケーション能力,問題解決力等の国際的素養を身に付け,もって,将来,国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図ることを目的とし,スーパーグローバルハイスクール(以下,SGH)を選定している.筆者らは,その1つである東京都富士見丘中学高等学校において,2016年度から,高校2年生の約15名を対象として高大連携授業を行ってきた.高校側が定めたテーマは「災害と地域社会」であり,年間を通し災害について学んだ後に,SGHに課されている海外研修として12月下旬に台湾中部に赴いている.現地では,1999年9月21日に発生した集集地震で大きな被害のあった地域にある高校生と英語で交流する.

筆者らはまず6月から8月にかけて地震に関する基礎的な科学的知見を教え,ハザードである地震とその結果起こる災害との区別を伝えた.地震そのものをなくしたり減らしたりすることはできないものの,災害は自分たちの行動次第でまだまだ減らすことができるという実感を高校生が持った頃に,高校生全員に「防災小説」を書いてもらった.「防災小説」とは,近未来の特定の日時に大地震が発生したと想定して,その時自分は何をしていてどんな気持ちになるか,家族や地域はどうかといったことを,自分が主人公の物語にする取り組みであり,既に高知県土佐清水市立清水中学校などで評価を得ている(大木・他,2017).

夏休み明けの9月~10月にかけて,生徒らによる15編の「防災小説」から生徒達自身でひとつを選び,全員でそれをブラッシュアップした後に文化祭で発表することとした.この時の聴衆は校外の保護者等だったが反響があったため,文化祭が終了した後に,同じものを朝のホームルームの時間に校内放送にて読み上げ発表し,中学高校の全校生徒が聴き入った.この校内放送の3日後に,中2と高2とを選んでアンケート調査を行ったところ,災害認知という点で高い結果を得られた.一方で,それが必ずしも行動に結びつかないという課題も見られた.また,「日常の大切さに気付いた」という項目が特に高い結果を示しており,災害認知の役割のみに留まらない、コンサマトリな考え方を育むものとしての防災小説の意義が裏付けられた.

12月の台湾フィールドワークに向けて,「防災小説」を英訳および中国語訳し,現地の高校生に中国語で読み上げた.発表直後ではあったが,「防災小説」に関するアンケート調査を実施したところ,富士見丘中学高等学校で実施したものと同様の高い効果が見られた.ただし,実際に防災行動に移したかどうかについての追跡調査は現時点では行っていない.
本発表では,これまで中学生をターゲットに行ってきた「防災小説」の高校生への展開とその効果について,日台での調査をもとに発表する.