日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 地球惑星科学のアウトリーチ

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 104 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、小森 次郎(帝京平成大学)、長谷川 直子(お茶の水女子大学、共同)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)、座長:大木 聖子萩谷 宏

11:30 〜 11:45

[G04-10] ナラティヴを活用したより良い防災教員研修のあり方

*パリーク 亜美1大木 聖子1 (1.慶應義塾大学 SFC防災社会デザイン研究室)

キーワード:防災、教育

2011年3月11日午後2時47分。国内では史上最大となるマグニチュード9.0を観測した東北地方太平洋沖地震は、その後の巨大津波と原子力発電所の事故により未曾有の被害をもたらした。このような超巨大地震が学校管理下の時間帯で発生したことから、社会的にはあらためて防災教育の重要性が強調されるようになったが、教員からは戸惑いの声が聞こえている(永松・大木,2015)。
カリキュラムは既に飽和状態であり、児童生徒指導や保護者対応等で多忙を極める学校現場において、そもそも教員自身が習ったこともない防災教育を、教材も準備されないままに教えるというのは至難の業である。多くの場合、防災を含めた学校安全を担当する教員は校内に1名しかおらず、実質的にはその教員が、学校保健安全法の定める年間安全計画や防災マニュアルの策定と、それらに基づいた防災教育の実施を担っている。時間・経験・予算がない中、当該教員がひとりで前年度計画を大きく改善することはまず考えられず、結果的にマニュアルの微修正と形骸化した避難訓練の継続に留まっている。
本研究は、このような学校現場の戸惑いを軽減するために実施したものである。防災教育の中でも特に教員研修に焦点を絞り、ナラティヴ・アプローチを導入することで上述の課題の解決を目指した。具体的には、学校管理下において大きな地震が発生した場合の詳細な描写−例えば子供の表情や言動、教員の不安や焦り−を、教員の目線で綴ったものを提示する。これを読んでインスパイアされたリスクを書き出し、同学年の教員とのグループワークを経て、全体で共有する。これにより、安全担当者だけではなく教員全員で災害安全に取り組む意識を持たせることが可能となり、現状の形骸化した避難訓練のリスクや、想定外は起こりうるという認識を持ってもらうことができた。