日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 地球惑星科学のアウトリーチ

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 104 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、小森 次郎(帝京平成大学)、長谷川 直子(お茶の水女子大学、共同)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)、座長:大木 聖子萩谷 宏

11:45 〜 12:00

[G04-11] 幼少期における地学教育の可能性

*森田 直樹1,4安井 万奈2,4萩谷 宏3,4 (1.明星大学、2.早稲田大学、3.東京都市大学、4.特定非営利活動法人Science and Art)

キーワード:幼児教育、自然科学、教育普及活動、地学教育

現在、高校・大学時における理系離れが問題となっている。この問題をひもとくと幼少時において理科(自然科学)にふれあう機会の少なさに行きあたる。幼少時に自然を科学的に理解し体験できるかどうかは親の教育方針や居住地などに依存する。本研究では、幼稚園での自然科学教育活動を通じて感じた子どもたちとの自然科学コミュニケーションの重要性及び地学をテーマにした活動における子どもたちの様子、教育効果、親との意見交換を報告する。

幼少期の子どもたちはその場の雰囲気、講師、参加している他の子どもの存在など、環境に慣れるまでに時間がかかる。それまでは落ち着いて話が聞けない子どもや実験や観察に集中できない場合も多いが、少人数を対象にして一人ひとりのコミュニケーションを大切にすることで徐々に講師と子どもたちとの信頼関係ができ、子どもたちが積極的に参加する姿勢も見られた。

地学のテーマは地球・天文など規模が大きく、机の上で実験するのが難しい分野である。さらに幼少時の子どもたちには何かを例えて説明することは伝わりづらく、標本は本物であることが重要なため、このことも地学のテーマを難しくさせている。身近なもので新たな観察や発見ができる事が重要だと考え、『河原の石図鑑をつくろう』で活動を行った。これは講師が採取してきた河原の石を子どもたちに配布し、それを子どもたち自身が図鑑で調べ比較し、標本箱に納めて持って帰るという標本の観察と図鑑での調べ学習を目的としたテーマである。石ころは講師自身が採取することで子どもとの信頼関係を深めることができる。河原の石は、利根川(埼玉県本庄市)と荒川(埼玉県大里郡寄居町)で採取した。図鑑は河原の石の写真が多く載せてある『かわらの小石の図鑑』千葉とき子他、東海大学出版と『日本の石ころ標本箱』渡辺一夫、誠文堂光社を主に使用した。玄武岩、石灰岩、変成岩など色、形、肌触りの違いを感じながら図鑑との比較を行った。石を図鑑で調べ、ラベルを書き、標本箱に納めるという工程を繰り返し行い、標本箱は後日さらに子どもたちが自分で拾った石を入れられるようスペースを残すなど工夫した。

その後子どもからの報告や保護者からコメントを受けて、子どもたち自身で石を観察し、作り上げた標本を持ち帰ることで能動的に学ぶ姿勢になったことが分かった。学校教育において自然体験や能動的学習が重視されているが、それは幼児教育においても実現可能であることが分かった。しかし、それには保護者によるサポートが必須であり、家に持ち帰ることができる身近なものをテーマにすることで後々のサポートもしやすく、子どもが保護者とともに地学を学ぶ良い機会になると思われる。