日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 地球惑星科学のアウトリーチ

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 104 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、小森 次郎(帝京平成大学)、長谷川 直子(お茶の水女子大学、共同)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)、座長:長谷川 直子植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)

14:30 〜 14:45

[G04-16] 赤色立体地図による地形表現 アウトリーチへの貢献

*千葉 達朗1 (1.アジア航測株式会社)

キーワード:赤色立体地図、アウトリーチ、溶岩流、海底地形図

1.はじめに
 地球科学のアウトリーチにおいて、地形表現は最も重要で基本的なテーマのひとつである。赤色立体地図は、航空レーザ計測による詳細な地形データを表現するために、2002年に開発した新しい表現法のひとつである。本報告では、赤色立体地図の発明から15年間にわたるアウトリーチにおける実践事例を報告する。

2.原理と特許
 赤色立体地図は、急斜面ほどより赤く、尾根ほど明るく、谷ほど暗くなるように調整した画像で、DEMから計算によって作成する。この手法は2005年にアジア航測が特許を取得して独占的に実施してきたが、最近研究教育目的の実施は届出で無償許諾されるようになった。最近では、国土地理院でも作成されている。作成済みアーカイブも、国土地理院の基盤地図10mメッシュについては、全国版を無償公開しており、地質図NAVIなどの背景に、表示可能となった。

3.事例
1)レーザ計測結果の可視化
 レーザ計測赤色立体地図は、樹木を除去した詳細な地形を認識しやすいので、これまで様々な野外調査や地形の判読に利用されてきた。火山の調査だけでなく、地すべり、活断層、平野の微地形研究に利用されてきた。また、各地の野外の看板や博物館の展示物に採用されてきた。伊豆大島、三宅島では看板に、伊豆半島や雲仙や富士山では、巨大なカーペットに加工されたレーザ赤色立体地図が、多くの人に感動を与えている。最近では古墳や山城や古道の調査でも使用例が増えている。新聞のカラー紙面でも立体感があるので、紙面に採用されることも多い。
2)地形模型の表面への印刷
伊豆大島の火山博物館には、大島の1万分の1地形模型が設置してある。これは、硬質発泡ウレタンを精密に切削加工して作成した模型表面に、3Dインクジェットプリンターで赤色立体地図を印刷したものである。耐久性が高いために、模型上でシャンプーなどの着色した粘性の高い液体を流下させ、溶岩流のシミュレーション実験を実施することが出来る。本来、噴火時のリアルタイムシミュレーション目的で考案されたものであるが、普段は一般向けの教材として使われている。
3)大地形表現への利用 
赤色立体地図は、地形を微分したような斜度図に改良を加えたもので、同じ縮尺でより多くの精密な情報を盛り込むことを可能とした。そこで、小縮尺の地形表現へも応用されるようになった。日本近海の海底地形(付図)や地球儀でがよい例である。また、国土地理院との共同研究で、月面の地形表現にも利用し、クレーターの表現がネット上で大きな話題となった。

3.まとめ
等高線から地形を立体的に理解するのは、専門家でも難しいことがある。背景に赤色立体地図を薄く重ねることで、大幅に効率的に正確に認識できるようになる。このような手法は、日本独自に発展をしてきたので、今後は世界に普及させてゆきたい。