日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 地球惑星科学のアウトリーチ

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、小森 次郎(帝京平成大学)、長谷川 直子(お茶の水女子大学、共同)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)

[G04-P02] 里山景観に関する地理的想像の促進:高精細地表情報と3D地形模型を用いた試み

*小倉 拓郎2早川 裕弌1中田 康隆2田村 裕彦1小口 千明3清水 きさら3山内 啓之1小口 高1 (1.東京大学空間情報科学研究センター、2.東京大学新領域創成科学研究科、3.埼玉大学理工学研究科)

キーワード:無人航空機システム、点群、3次元

近年,UAS(Unmanned Aerial System,通称ドローン)を用いたSfM多視点ステレオ写真測量や,地上レーザ測量(TLS: Terrestrial Laser Scanning)などを用いた高精細地形情報の取得が容易となり,研究・産業などの分野で急速に普及してきたが,高精細地形情報を用いた地球惑星科学的な学習材としての活用はまだ多くない(早川・小花和 2017)。UASやTLSを用いた地形情報は,調査手法の制約から,数百 m~数 km程度の範囲を対象としたものが多い。これは,小学校社会科の「身近な地域や市(区・町・村)(第3・4学年)」,小学校理科の「流水の働き(第5学年)」,「土地のつくりと変化(第6学年)」などの単元が目指す学習スケールと調和的である。これらの地球科学に関連する単元においては,地球上で生じる文化的,自然的現象の「位置」や「空間」を感じ取り,それぞれを結び付けて考え,また未知の領域についても空間的に拡張して想像するという「地理的想像(geographical imagination)」を喚起させることが,必要な手法の一つであると考えられる。また,小学校の総合的な学習では,他教科の学習を生かした横断的・総合的な学習,探求的な学習を,日常生活のスケールで学習することが求められる。このために,前述の2教科(社会科・理科)の学習内容をもとにして,課題探求型学習を進めることができるであろう。その一例として,高精細地表情報を元にした学習材を用いて,小学校の総合的な学習の時間に行った授業について報告する。たとえば,地形の時系列変化について,3Dプリント模型を用いて視覚のみならず触覚でも感知させた結果,児童たちの「地理的想像」に与えた影響は小さくなかった。すなわち,小学校5年生の理科の学習で習得する「侵食・堆積」の知識を手で感じることが可能となり,侵食・堆積の様子や速度の大きさを体感してもらうことができた(図1)。従来の地形図では表現・実感が難しかった3次元的な地形変化の理解促進に役に立ったと考えられる。また,地域の里山をあらわす3D地形模型の製作を通して,山地の形状や平地との勾配差,森林の範囲などに加え,都市領域の拡がりや道路網の分布などを実感しつつ,地域の自然的および文化的景観に関して,地理的想像を膨らませることに役立てられた。

参考文献
早川裕弌・小花和宏之.2017.高精細3次元点群情報を活用したダンボールモデルの作成と地形の立体的な理解.JpGU-AGU2017(G03-P02).