日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 地球惑星科学のアウトリーチ

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、小森 次郎(帝京平成大学)、長谷川 直子(お茶の水女子大学、共同)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)

[G04-P05] 実験水槽を用いた津波観測のアウトリーチ

*三反畑 修1塩原 肇1上田 拓1小川 諄1壽 一哲1高野 和俊1王 宇晨1楠本 聡1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:津波水槽実験、海底水圧計、潮位計、津波観測

東京大学地震研究所では,毎年8月初旬に大学のオープンキャンパスに合わせて「地震研一般公開」が開催され,その一環として来所者に対して地球科学的知見や研究活動に関するアウトリーチを目的に,学生を主体とした「学生実験」が市民に対して行われる.中でも「水槽を用いた津波実験」は,2011年東北太平洋沖地震以降,認知度が高い津波現象を,発生から伝播,遡上のプロセスを水槽内で観察できることから,毎年多くの来所者からも好評である.

近年,津波研究分野の進展として,津波観測網の発達が挙げられる.海岸沿いに設置される潮位計,やや沖合に展開されている国土交通省によるGPS波浪計に加えて,東南海・南海地震の想定震源域に設置された海洋開発研究機構(JAMSTEC)のDONETや,日本海溝沿いに設置された防災科学技術研究所(NIED)のS-netなど,海底水圧計を用いた津波観測網が整備され,津波研究や津波の早期検出による防災に役立てられている.しかし例年の展示から来所者の反応を見ると,そういった観測網への認知度は必ずしも高くないようであった.そこで我々は,2017年度の一般公開において,「津波観測の原理および重要性のアウトリーチ」を目的として,潮位計と海底水圧計を模した観測装置を,津波実験水槽に新たに取り付け,展示を行ったので,その概要を報告する.

今回,展示のために取り付けたのは,沿岸のフロート式潮位計を模した「ブイ型観測計」と,沖合の海底水圧計を模した「水中圧力計」の二種類である.実験水槽(約200x15x15cm)で発生させる極小規模な津波(約3cm)へ影響を出来るだけ与えないこと,および安価に実現できることを念頭に観測装置を制作した.ブイ型観測計は,水中に鉛直に立てた金属棒をガイドとして,穴の空いた発泡スチロールを浮かべ,水槽の天井からの距離を赤外線測距モジュール(GP2Y0E03)で測定し,津波による水面の変動を電気信号の変動として観測した.一方で,水中圧力計は,小型プラスチック容器内に,気圧センサー(MIS-2500-015G)をシリコンオイルで満たし,開口部を薄いフィルムで密閉した.それを水槽の底に沈めることで水面の変動を底での水圧の変動として検知し,津波を電気信号として観測した.当日の展示では,津波を水槽で発生させ,水槽内を伝播する津波を実際に電気信号として記録し,来所者に明示した.これらの電気信号の波形表示には,既存のカラー液晶表示器付データロガー(MR8847-01)を利用し,必要に応じてハードコピーを出力した.

このように,水槽を用いて津波現象を再現するだけでなく,観測機器を模した装置を目に見える形で取り付け,津波の観測記録を明示することで,観測データをもとに研究をしている地球科学者の研究活動を,市民にとってより身近に感じるきっかけになると期待される.さらに,S-netを始めとする海底水圧計を用いた沖合津波観測網は,沿岸部到達前に津波を捉えることができるという点で,その重要性は防災の観点からも高まっている.そのため,水圧計を用いた観測の原理を知ることでリアルタイム観測体制を周知することにもつながることが期待される.