日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-05] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 102 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、座長:丹羽 淑博畠山 正恒(聖光学院)

15:45 〜 16:00

[G05-08] 中学生は海洋底の様子をどのように考えているか?

*川村 教一1 (1.秋田大学教育文化学部)

キーワード:地学的概念、太平洋、海底地形、海底地質、化石

中学校理科では、プレート運動の基礎として日本列島付近の太平洋プレートの運動を学習する。生徒の生活経験とはかけ離れた、海洋における、目にすることができない地形や地下の構造を扱うような海洋プレート運動の学習を、単なる知識伝達ではなく、探究的に学習させるにはどのようにすれば良いのだろうか。

演者は、そのような学習の単元設計に先立ち、まず生徒の海洋地形・地質に関する認識を明らかにしようと考えた。認識の実態をもとに、海洋プレートの運動に関する探究的な学習の改善を検討することができる。そこで、中学生1年生を対象に、西太平洋海底下の様子について、海底地形とその変動、海底地質についてどのような認識を持っているのか、アンケート調査の分析により明らかにする。

調査対象は地層やプレート運動の学習前の国立A大学附属中学校生徒144名で、2018年2月に調査を実施した。

調査項目は、岩手県~米国ハワイ島間の区間の、太平洋の海底地形、海洋地質、地形の水平方向および垂直方向の変動についてである。回答は自由記述とした。

調査結果のうち、海底地形については、ほとんどの生徒が、区間の中央部に向かって徐々に深くなうような、いわゆる「船底」形の地形断面を描いた。深海平坦面に相当するような平坦地形を描いた生徒はまれである。海底地質については、大半の生徒が層構造を描いた。一方、無回答の生徒も少なくない。層構造は、海底地形に調和的に描かれた場合と、地形とは無関係に水平に描かれた場合とがある。層に名称を記入した生徒は少なく、書かれた名称は、砕屑物(れき、砂)や火成岩(流紋岩、安山岩)がある。級化成層を描いている生徒もいた。

記述内容を考察すると、海底地形についてほとんど知識がないとおもわれる。海底には最深部が1か所あると考え、そこに向かって陸の地形を延長させて描画したと思われる。海底地質については、小学校理科における沿岸部における地層の学習内容を適用したり、陸域における火成岩の学習内容を踏まえて回答したりしていると思われる。

以上のように、生徒は陸域やその近傍における地学事象しか学習していないので、それを海底地形や海洋地質に当てはめようとしている。科学的な海洋観を構築させようとするとき、海底地形や海洋地質に関する事象の提示が必要であると考えられる。