日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-05] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 102 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、座長:丹羽 淑博畠山 正恒(聖光学院)

16:00 〜 16:15

[G05-09] ROVパイロットトレーニング: 一回きりの体験から学びの持ち帰りへ

*比嘉 直人1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構 国際海洋環境情報センター)

キーワード:海洋人材育成、アクティブラーニング、キャリア教育

海洋研究開発機構 国際海洋環境情報センター (JAMSTEC/GODAC) では、「もっと知りたい 海のこと 地球のこと」をテーマに海洋科学技術の理解増進を目的としたプログラムを多数実施している。「海洋科学技術」という分野を、社会一般に、特に将来の海洋人材を担う青少年に、理解してもらう事は我々の大きな使命のひとつと考える。青少年が自分の将来の姿をイメージした時に、「海洋科学技術の分野で活躍している大人の自分」を描いてもらえることが、この使命に対する一つの回答だと考えている。本発表では、JAMSTEC/GODACの提供するプログラムの中でも人気の高いRemotely operated vehicle (ROV) と呼ばれる遠隔操作型無人探査機の操縦体験について、単発の体験イベントではなく、トレーニング形式のプログラムとしての実績を紹介する。

「ROVパイロットトレーニング」は、最終的な目標を「ROV操縦免許証の取得」と設定し、ROVと海洋科学技術に関する学習およびROV操縦技能の向上を目指す複数回参加型 (年4回開催) のプログラムである。参加者には、回を重ねるごとにROVに関する新たな情報や海底資源調査の疑似体験に加え、調査対象となる深海生物の情報等を提供し、知識の習得へとつなげると共に、操縦技能に関しては難易度を徐々に上げた課題を設定し、チャレンジ意欲を引き出すためのステップアップの要素も取り入れている。また、最終回の卒業検定では、自動車免許取得さながらの筆記試験と実技試験を実施している。この筆記試験では、トレーニング中に当センター独自に作成し配布したROV学習帳から出題し、大人から小学生以下の児童までが同じ空間で席につき試験が行われる。低学年の生徒にとっては、大人と肩を並べて試験を受けることになることから、今までとは異なる種類の緊張感を味わうこととなる。実技試験では、深海の暗闇が再現された小さな画面のみを見て操作を行うなど、海上での実際のROV操作と近い環境で実施される。

このパイロットトレーニングを通して、参加者であるこども達の「おしごと」に関する意識を、海に携わりたいという漠然としたイメージから一歩進め、研究職か技術開発職か、または、パイロットなのかといった、具体的イメージをこども達に持たせることが出来たと考えている。実際、参加したパイロット候補生の保護者からは、「目標を持たせづらかった子供が、自ら進んで参加を望んだ」、「年間を通して参加することで、日常の中にサイエンスの話題を取り入れることができた」、「今まで知ることもなかったが、ROVパイロットという仕事を発見し、将来の仕事として望むようになった」等、当初、我々が望んだ以上の反応を得ている。このように、ROVパイロットトレーニングプログラムでは、仕事関する意識付けや、ストーリー性のある学習内容等を取り入れる事で、これまで一回きりのその場限りの「楽しい」体験だけであったイベントを、参加者が毎回「学び」を持ち帰る、さらには、次へつながるプログラムにできたと考えている。