日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-05] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)

[G05-P11] 海の博士に聞いてみよう!日本海洋学会「海の出前授業」

*森岡 優志1上野 洋路2藤井 直紀3小埜 恒夫4 (1.海洋研究開発機構、2.北海道大学 大学院水産科学研究院、3.佐賀大学 低平地沿岸海域研究センター、4.水産研究・教育機構)

キーワード:出前授業、海洋科学、日本海洋学会

島国に住む日本人にとって、海は身近な存在である。水産や海運など経済活動だけでなく、レジャーや生活儀礼など文化活動にも広く利用されている。一方で、海は温暖な気候や豊かな生物多様性など、地球環境の形成に重要な役割をしている。しかし、こうした海の科学を教育の現場で学ぶ機会は地球惑星科学の中でも比較的少なく、国民の理解が十分に進んでいるとは言えない。そこで、日本海洋学会では2016年度より、海の専門家である学会員を小学校、中学校、高等学校などに派遣して講義を行うプログラム「海の出前授業」を行っている。本発表では、海の出前授業の仕組みや実施例、今後の課題について報告する。

海の出前授業の講師として現在、全国で42名の学会員が登録されている。日本海洋学会のホームページより、依頼主が希望する授業のテーマや場所をもとに講師を選び、事務局を通して派遣された講師が海の出前授業を行う、シンプルな仕組みとなっている。派遣に必要な経費は、原則として依頼主が負担する。出前授業の受講者は、小学生から中高校生、一般市民までと幅広く、受講者に応じて授業の内容も、学習指導要領(社会や理科、地学など)に沿ったものから最先端の海洋科学、情報科学までと様々である。

海の出前授業がスタートした2016年度には、合計で6件の授業が実施され、2017年度には7件の授業が実施予定である。依頼者の多くは講師を直接指名してきており、出前授業のホームページを見て講師のリストから選んで申し込む場合と、講師が依頼主に出前授業の存在を伝えることで申し込む場合が半々である。一部の地域では、同じ講師を指名するケースも見られる。

2016年度より日本海洋学会の大会期間中に、海の出前授業の講師を集めた情報交換会を行ってきた。出前授業を実施した講師からは、授業の内容や設備など事前に教員と打ち合わせすること、受講者の理解が進んでいるか質問や感想などを通して確認すること、など様々な報告があった。また、他の機関で海洋教育を推進している方々からは、海の出前授業は全国的に行われており、海洋教育に関する既存のネットワークと連携することで、海の出前授業を広く周知していく必要があると指摘があった。
2016年度に開始して以来、出前授業の依頼件数は増えつつあるが、登録講師の数に比べると未だ少ない。出前授業の認知度を上げるために、関連する学会や教育系のイベントに参加して広報活動を今後も続けていく必要がある。本発表を通して、海の出前授業の存在を知ってもらい、地球惑星科学の一部を担う海の科学に関心を抱いてもらう契機としたい。