日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-05] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)

[G05-P17] 学習量から見た高校の地球科学教育
~数よりも量,量よりも質を~

*中島 健1 (1.龍谷大学)

キーワード:地球科学教育、高校教科書、国内総学習量

2012年度に開始した現行学習指導要領による高校地学教育も6年目を迎え,内容が見直された改訂版教科書も2017年度から使用されている。そのような中で「地学基礎」教科書の需要数は33万冊前後を推移しており,全高校生の約26%が履修していると推定される。しかし発展科目「地学」は全高校生に対する履修率が1%未満,かつ2014年度の1.64万冊から2018年度は1.16万冊まで3割減という状態で,由々しき問題となっている。
 2012~3年度当時,旧学習指導要領に基づく「地学1」が9万冊程度であったものが「地学基礎」になっておよそ4倍増となり,地学教育の復活であるとして大いに歓迎されていた。しかしこれは以下に示すことを考えると,実は手放しで喜べないものであったといえる。
(1)理科の必履修科目数が2科目から原則3科目に増えたことの代償として,標準単位数が「地学1」の3から「地学基礎」の2へ大きく削減されたこと
(2)地学と生物の基礎的内容を統合した科目で約38%の履修率があった「理科総合B」の廃止との引き替えであったこと
 そこで本発表では,単に地学の履修者数の推移だけでなく学習量や,それを指導する教員数の推移の指標となり得るGDL(Gross Domestic Learning;国内総学習量)(中島,2013,2015)をもとに,国民全体としての地球科学の学習量がどのようになっているかについて論ずる。それにより,次期学習指導要領で実現しなければならない問題を浮き彫りにする。
 また,ここ数年間の理科教員大量退職にもかかわらず,新規に補充される教員の専門科目は大半が物化生で地学は約3%にしか過ぎず,圧倒的に不足している事実がある。このことは「地学基礎」の暗記科目化に拍車をかけ,自然災害や地球環境問題への対処に強い人間を育てにくくすることにつながりかねない。
 単に数の増減だけにとらわれるのではなく,より一層の学習内容の精選と緻密化を図り,様々な地球的問題に対処できる人材を育成することを考えなければならない。
参考資料
時事通信社,高校教科書採択状況,内外教育,3997~6642,1988~2018
中島健,高校地学教育は盤石か?,東京大学地震研究所2013年度共同利用研究集会,2013
中島健,高校地学教育は盤石か?,日本地震学会モノグラフ,4,93-98,2015
東京アカデミー:教員採用試験結果,http://www.tokyo-ac.jp/adoption/outline/high1/