日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG24] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2018年5月20日(日) 09:00 〜 10:30 A04 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、山口 直文(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科、共同)、高柳 栄子(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、座長:清家 弘治山口 直文

10:15 〜 10:30

[HCG24-05] 中国雲南省に発達する始新世の年縞トラバーチン

*柿崎 喜宏1狩野 彰宏1王 可1鄭 洪波2 (1.東京大学大学院理学系研究科、2.雲南大学)

キーワード:トラバーチン、安定同位体、雲南省

中国雲南省北部に分布する始新統宝相寺(Baoxiangsi)層は河川成堆積物を主とし,局所的に石灰岩を含む。この石灰岩について堆積学的な研究は乏しく,生成環境について良く理解されていなかった。剣川(Jianchuan)近郊の砂岩採石場には石灰岩が良く露出しており,オンコイドのような粒子を含むものの他に縞状組織を呈する石灰岩が認められた。

石灰岩の縞は1.5cm 程度の間隔でくりかえす明色層と暗色層からなる。明色層は細粒のミクライト質方解石が緻密に集積した組織を示し,まれに太さ20ミクロン程度のフィラメント状のチューブ構造を含む。これは,フィレメント状シアノバクテリアの上に急速に方解石が沈積したものと考えられる。暗色層はやや粗粒の方解石粒子から構成され,水平方向に伸びた窓状構造を持つ。この構造は比較的厚い (~1 mm) バイオフィルムとともに沈殿した部分であると解釈される。縞状石灰岩の高解像度炭素・酸素同位体比の分析結果は縞状組織と同調した変化のパターンを示す。炭素同位体比は概ね+3から+7‰の間で変動し,明色層で低く,暗色層で高い。酸素同位体比は多くね-13から-11‰の間で変化し,明色層で低く,暗色層で高い。
宝相寺層の石灰岩は組織的にトゥファと類似し,同位体的にはトラバーチンと類似している。海成の炭酸塩岩とは考えられない。高い炭素同位体比は地下起源の炭素を意味し,それが地下水に溶解し,岩石反応を得て地上に湧出したものであると考えられる。おそらく,雲南省北部に発達する白水台のトラバーチンのように,地下から湧出したCaとCO2濃度が高い水から沈殿したものと考えられる。また,明色層は夏の,暗色層は冬の沈殿物であり,水の酸素同位体比が安定していたと仮定すると,水温の季節変化幅は約10℃であったと考えられる。酸素・炭素同位体比に見られる小さい乱れは,降水量変化を反映した水量変動を表している可能性がある。