日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG24] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 A04 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、山口 直文(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科、共同)、高柳 栄子(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、座長:清家 弘治山口 直文

10:45 〜 11:05

[HCG24-06] 日本最長寿二枚貝の殻が記録する核実験の歴史と津波に伴う大量死

★招待講演

*窪田 薫1 (1.海洋研究開発機構 高知コア研究所)

キーワード:二枚貝、東北、放射性炭素、津波、海底

北日本の浅海底から見つかった二枚貝の一種ビノスガイ(Mercenaria stimpsoni)は100歳を超す寿命を持ち、日本産の二枚貝としては最長寿であることが最近明らかになった。本発表では、 岩手県大槌・船越湾から得られたビノスガイの殻の成長パターンについて概観するとともに、年輪解析と放射性炭素分析を通じて明らかになった、過去の海水の放射性炭素変動と、2011年3月の大津波に伴う船越湾のビノスガイの大量死について発表する。

年輪幅の変動は個体間で同期しており、厳密な暦年代を構築することを可能にしている(年輪年代学)。複数個体のビノスガイの殻の放射性炭素分析結果をもとに、北西太平洋高緯度域としては初となる、1950~1960年代に盛んに行われた大気圏核実験に伴う14C濃度の急増を含む、海水の放射性炭素変動曲線(Bomb-14C曲線)を復元した。復元されたBomb-14C曲線の形状から、三陸沿岸の浅海域においては、津軽暖流(対馬海流を起源とする)の影響が強く見られることがわかった。さらに、得られたBomb-14C曲線を船越湾の海底から得られた死殻の高精度の年代決定ツールとして用いることで、2011年3月の大津波に伴う海底環境への擾乱がビノスガイの大量死を招いていたことが明らかになった。さらに、過去の大津波(1933年の昭和三陸地震および1896年の明治三陸地震)が同じくビノスガイの大量死を招いていた可能性についても示す。