[HCG27-P03] 割れ目周辺マトリックスにおける微細間隙構造の3次元把握
キーワード:地層処分、レジン注入、微細間隙構造、岩石マトリックス、土岐花崗岩、瑞浪超深地層研究所
高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、放射性核種は地下水を媒体とし、岩盤中のmmスケールの開口割れ目を流動的に移行することに加え、大小さまざまなせん断運動でできた破砕構造、鉱物による充填箇所、岩石マトリックス内のμmスケールの微細な間隙などへ拡散し、物理的・化学的に吸着することにより移行が遅延すると考えられている。これらの構造に存在するミクロな間隙を捉え、その形態や分布を3次元的に把握し岩盤中の地下水移行モデルに反映させることは、核種の移行経路をよりリアルなものにし精度よく評価することに寄与する。日本原子力研究開発機構の瑞浪超深地層研究所深度300m坑道において掘削して得られたコア試料で割れ目周辺マトリックスの変質を伴う場合の岩石マトリックスの間隙率は平均2.68%であり、マトリックスに変質を伴わない場合(平均1.12%)に比べて間隙率は大きくなる。本稿では、割れ目周辺変質の有無と間隙率の関係に着目し、微細間隙構造の3次元的な形態を把握するため、岩石マトリックス部に蛍光剤入りレジンを圧入したのち製作した岩石薄片を蛍光顕微鏡下で観察し、レジン充填間隙構造の可視化を試みる。レジン硬化後、割れ目面に対し直交方向に岩石薄片を製作し、蛍光顕微鏡下でレジンに添加した蛍光剤の蛍光波長(分光光度計による測定で500-560nm程度)が可視化されるフィルター(励起波長:330-380nm, 吸収波長:420nm以上)を選択し、レジン充填箇所の形態観察および撮影画像上で間隙幅の測定を行った。その結果、割れ目近傍では平均約7μmの幅の微細割れ目にレジンが充填している箇所が確認でき、偏光顕微鏡による鉱物同定と比較すると、レジンの充填割れ目は開口割れ目表面から石英や長石類の粒界および粒内クラックを充填しながら岩石マトリックス内部へと広がっていることが分かった。今後は割れ目面に対して平行方向にも岩石薄片を製作し、同様の形態観察および間隙幅の測定を行い、両結果から3次元的に微細間隙構造について考察する。なお、本研究の内容は、経済産業省資源エネルギー庁より(一財)電力中央研究所が受託した「岩盤中地下水移行評価確証技術開発」の成果の一部である。また、(国研)日本原子力研究開発機構との共同研究の一部として実施した。