日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG28] 海岸低湿地における地形・生物・人為プロセス

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:藤本 潔(南山大学)

[HCG28-P02] 高解像度画像解析に基づくマングローブ林の土地被覆変化

*羽佐田 紘大1渡辺 信2藤本 潔3Lihpai Saimon4 (1.法政大学文学部、2.琉球大学熱帯生物圏研究センター、3.南山大学総合政策学部、4.ミクロネシア連邦ポンペイ州政府)

キーワード:マングローブ、林冠ギャップ、無人航空機(UAV)、GIS、ポンペイ島

近年、マングローブ域における高解像度の衛星画像や無人航空機(UAV)で撮影した画像を用いて、植生構造が詳細に把握されるようになってきた(Hirata et al. 2013、Uchiyama and Miyagi 2016など)。本研究では、ミクロネシア連邦ポンペイ島のマングローブ林を対象に、衛星画像およびUAV撮影画像の解析により土地被覆状況を把握することを試みた。
Google Earth(2007年1月25日撮影)およびUAV(2017年9月4日撮影)画像を用いて、GISソフトウェアのArcGIS(Esri社)の画像分類により植生および非植生(水域を含む)被覆域を抽出し、対象範囲(400 m×1300 m、以下範囲1)内におけるそれぞれの面積および割合を求めた。さらに、任意の範囲(100 m×100 m、以下範囲2)において目視による林冠ギャップの判読を行い、ギャップ面積を計算した上で、範囲2における画像分類による抽出結果と比較した。
範囲1における植生および非植生被覆域の面積(割合)は、Google Earth画像がそれぞれ39.0 ha(75.0%)、13.0 ha(25.0%)、UAV画像がそれぞれ36.8 ha(70.8%)、15.2 ha(29.2%)であった。これに基づけば、10年間で2.2 haの植生が失われたことになる。また、範囲2を目視で判読して求めたギャップ面積(割合)は、Google Earth画像が189.2 m2(1.9%)、UAV画像が652.8 m2(6.5%)と算出された。一方、範囲2における非植生被覆域の面積(割合)は、Google Earth画像が78.1 m2(0.8%)、UAV画像が1051.5 m2(10.5%)となった。これらの値の差は、Google Earth画像ではギャップが抽出しきれなかったのに対して、UAV画像ではギャップのほか、林冠や枝葉の隙間まで抽出されたことを表しており、非植生被覆域をギャップと認識すると過小または過大評価になることを示唆している。ただし、少なくとも範囲2において、目視による判読に基づいたギャップ面積は10年間で約3.5倍拡大しており、Google Earth画像とUAV画像との間で精度の差があるものの、範囲1全体としても10年間で非植生被覆域(主にギャップ)の範囲や規模が大きく変化した可能性が高い。
熱帯地域に位置するポンペイ島では、ギャップの形成要因として、熱帯低気圧の影響が大きいと考えられる。また、範囲1のマングローブ林内では、海面上昇の影響による表層侵食(Bruguiera gymnorrhizaSonneratia albaの根の露出)が確認されており(藤本ほか 2017)、海面上昇および表層侵食に伴う地盤高の相対的な低下がギャップの形成に寄与した可能性もある。今後、同地域で定期的なUAV撮影を実施して、ギャップのみを抽出した上でその経年変化を詳細に把握し、これと現地調査結果や気候・気象データなどとを照らし合わせることで、ポンペイ島マングローブ林のギャップダイナミクスが明らかになっていくだろう。