[HCG28-P03] ミクロネシア連邦ポンペイ島Sonneratia alba林における地上部バイオマスの14年間の推移
キーワード:地上部バイオマス、マングローブ(Sonneratia alba forest)、バイオマス動態、幹断面積成長率、海面上昇、ミクロネシア連邦ポンペイ島
1 はじめに
過去に大規模な開発や顕著な人為的攪乱を受けずに、良好な森林環境が維持された天然生マングローブ林が残るミクロネシア連邦ポンペイ島において、1994年から2003年にかけてマングローブ林を構成する樹種別の成長特性と持続的管理を予測するための固定プロットを複数の種組成をもつ4群落のマングローブ林に設置した。その後の長年のモニタリング調査からマングローブの立地環境と林分構造(Fujimoto et al,1995)、地上部バイオマスと生産性の推移(Fujimoto et al,2013)、地上部のバイオマス動態(Nishino et al,2015)などが明らかにされてきた。本研究発表では、ミクロネシア連邦ポンペイ島におけるSonneratia alba林の成長特性や地上部のバイオマス動態を検証するため、Sonneratia alba林の種構成、立木密度、幹断面積の成長率、地上部バイオマス総量と増加速度の推移を考察した。
2 調査方法
ミクロネシア連邦ポンペイ島の北部の海側に成立するSonneratia alba群落に幅20m×奥行100mの固定プロットを2002年に設定した(以下PS固定プロットと称する)。毎木調査は、各プロット内の胸高以上の全個体について、Rhizophora属は支柱根上30cm、その他の樹種は胸高(地上高1.3m)の直径を測定した。調査は2002年、2004年、2012年、2016年に実施した。幹断面積年成長率の算出は2002年と2016年の計測データを使用し、樹種ごとの直径から各年における断面積および成長量と成長率を計算した。地上部バイオマスの算出は、毎木調査で得られたプロット内の全個体の直径値をTabuchi et al. (2006b)の関係式に代入して樹高を推定し、呼吸根以外の地上部の各部位(幹(wS)、枝(wB)、葉(wL)、種子(wF))のバイオマスは、Komiyama et al.(1988)の相対成長関係式を用いて算出した。S. alba呼吸根の地上部バイオマス(wP)の推定は、プロット内に複数配置した1m×1mの方形区内の全呼吸根の高さをTabuchi et al. (2006a)の関係式に代入し算出した。
3 結果と考察
PS固定プロットには、Sonneratia alba(以下S. alba)、Rhizophora apiculata (以下R.apiculate)、Bruguiera gymnorrhiza (以下B.gymnorrhiza)の3種が成立した。海側(汀線域)にS.albaが多く分布し、内陸側に向かってR.apiculateとB.gymnorrhizaが分布する傾向であった。立木密度は2002年測定時の1,885本/haから2016年には1,280本/haになり14年間で605本/ha減少した。2004年は1,795本/ha、2012年は1,385本/haだった。樹種別では、S. albaは190本/ha(2002年:870本/ha、2016年:680本/ha )が減少した。R.apiculataは365本/ha(2002年:840本/ha、2016年:475本/ha)が減少し、B.gymnorrhizaは40本/ha(2002年:165本/ha、2016年:125本/ha)が減少した。特にR.apiculataは半数近くの立木本数が減少した。幹断面積割合は大径木にサイズ構成のあるS. albaが90%近くを占めた。成立本数ではR.apiculata が最も多いが、R.apiculataとB.gymnorrhizaの幹断面積割合はともに10%に満たなかった。2002年から2016年までの14年間の推移をみると、立木密度は低下しているものの、幹断面積成長率が高い傾向であった。
PS固定プロットの1ha当たりの地上部バイオマス総量は、536.9 t/haであった。樹種別ではS.albaは478.4 t/ha(89.1%)、R.apiculataは31.9 t/ha(5.9%)、B.gymnorrhizaは26.6 t/ha(5.0%)であった。地上部バイオマスは3種とも調査年ごとに増加した。S. albaは72.6 t/ha(2002年:443.6 t/ha 、2016年:516.2 t/ha)と他の2種に比べ顕著に増加した。R.apiculataは6.6 t/ha(2002年:25.3 t/ha 、2016年:31.9 t/ha)増加した。B.gymnorrhizaは7.5 t/ha(2002年:19.1 t/ha 、2016年:26.6 t/ha)増加した。さらに年平均地上部バイオマス増加速度は、3.7 t/ha/yr(2002~2004年)、5.2 t/ha/yr(2004~2012年)、8.1 t/ha/yr(2012~2016年)と高まった。S. albaの部位別では幹のバイオマスが大きく増加した。S. albaの呼吸根バイオマスは2002年の33.1 t/haから2012年は22.8 t/haに減少したものの、2016年は38.0 t/haと大きく増加した。
過去に大規模な開発や顕著な人為的攪乱を受けずに、良好な森林環境が維持された天然生マングローブ林が残るミクロネシア連邦ポンペイ島において、1994年から2003年にかけてマングローブ林を構成する樹種別の成長特性と持続的管理を予測するための固定プロットを複数の種組成をもつ4群落のマングローブ林に設置した。その後の長年のモニタリング調査からマングローブの立地環境と林分構造(Fujimoto et al,1995)、地上部バイオマスと生産性の推移(Fujimoto et al,2013)、地上部のバイオマス動態(Nishino et al,2015)などが明らかにされてきた。本研究発表では、ミクロネシア連邦ポンペイ島におけるSonneratia alba林の成長特性や地上部のバイオマス動態を検証するため、Sonneratia alba林の種構成、立木密度、幹断面積の成長率、地上部バイオマス総量と増加速度の推移を考察した。
2 調査方法
ミクロネシア連邦ポンペイ島の北部の海側に成立するSonneratia alba群落に幅20m×奥行100mの固定プロットを2002年に設定した(以下PS固定プロットと称する)。毎木調査は、各プロット内の胸高以上の全個体について、Rhizophora属は支柱根上30cm、その他の樹種は胸高(地上高1.3m)の直径を測定した。調査は2002年、2004年、2012年、2016年に実施した。幹断面積年成長率の算出は2002年と2016年の計測データを使用し、樹種ごとの直径から各年における断面積および成長量と成長率を計算した。地上部バイオマスの算出は、毎木調査で得られたプロット内の全個体の直径値をTabuchi et al. (2006b)の関係式に代入して樹高を推定し、呼吸根以外の地上部の各部位(幹(wS)、枝(wB)、葉(wL)、種子(wF))のバイオマスは、Komiyama et al.(1988)の相対成長関係式を用いて算出した。S. alba呼吸根の地上部バイオマス(wP)の推定は、プロット内に複数配置した1m×1mの方形区内の全呼吸根の高さをTabuchi et al. (2006a)の関係式に代入し算出した。
3 結果と考察
PS固定プロットには、Sonneratia alba(以下S. alba)、Rhizophora apiculata (以下R.apiculate)、Bruguiera gymnorrhiza (以下B.gymnorrhiza)の3種が成立した。海側(汀線域)にS.albaが多く分布し、内陸側に向かってR.apiculateとB.gymnorrhizaが分布する傾向であった。立木密度は2002年測定時の1,885本/haから2016年には1,280本/haになり14年間で605本/ha減少した。2004年は1,795本/ha、2012年は1,385本/haだった。樹種別では、S. albaは190本/ha(2002年:870本/ha、2016年:680本/ha )が減少した。R.apiculataは365本/ha(2002年:840本/ha、2016年:475本/ha)が減少し、B.gymnorrhizaは40本/ha(2002年:165本/ha、2016年:125本/ha)が減少した。特にR.apiculataは半数近くの立木本数が減少した。幹断面積割合は大径木にサイズ構成のあるS. albaが90%近くを占めた。成立本数ではR.apiculata が最も多いが、R.apiculataとB.gymnorrhizaの幹断面積割合はともに10%に満たなかった。2002年から2016年までの14年間の推移をみると、立木密度は低下しているものの、幹断面積成長率が高い傾向であった。
PS固定プロットの1ha当たりの地上部バイオマス総量は、536.9 t/haであった。樹種別ではS.albaは478.4 t/ha(89.1%)、R.apiculataは31.9 t/ha(5.9%)、B.gymnorrhizaは26.6 t/ha(5.0%)であった。地上部バイオマスは3種とも調査年ごとに増加した。S. albaは72.6 t/ha(2002年:443.6 t/ha 、2016年:516.2 t/ha)と他の2種に比べ顕著に増加した。R.apiculataは6.6 t/ha(2002年:25.3 t/ha 、2016年:31.9 t/ha)増加した。B.gymnorrhizaは7.5 t/ha(2002年:19.1 t/ha 、2016年:26.6 t/ha)増加した。さらに年平均地上部バイオマス増加速度は、3.7 t/ha/yr(2002~2004年)、5.2 t/ha/yr(2004~2012年)、8.1 t/ha/yr(2012~2016年)と高まった。S. albaの部位別では幹のバイオマスが大きく増加した。S. albaの呼吸根バイオマスは2002年の33.1 t/haから2012年は22.8 t/haに減少したものの、2016年は38.0 t/haと大きく増加した。