日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG28] 海岸低湿地における地形・生物・人為プロセス

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:藤本 潔(南山大学)

[HCG28-P05] 早中完新世における天津海河南岸平原の珪藻に富む泥炭層の堆積環境

*方 晶1王 福2,3 (1.天津師範大学地理と環境科学学院、2.中国地質調査局天津地質調査センター、3.中国地質調査局泥質海岸帯地質環境重点実験室)

キーワード:珪藻に富む埋没泥炭層、珪藻分析、沈下速度

貝殻堤が4列発達する天津海河南岸平原において,もっとも古い貝殻堤の内陸側に位置する現海岸線からそれぞれ約85kmと53km離れる2箇所で長さ同じ30 m のDC01とQX01というコボーリングコアを掘削した.これら2本のボーリング試料に20 cm間隔で珪藻分析を行った結果,全体として珪藻がめったに見られないがそれぞれ10cmと40cmの厚さをもつ薄層の泥炭と腐植質粘土からなる珪藻を豊富に含める堆積層が見つけられた.その中で,内陸側に位置するDC01コアの深度8.46~8.56mの薄層泥炭層には珪藻が豊富であり,主にMelosira ambigua,Pinnularia spp.など淡水珪藻が見られることにより,淡水湖沼に形成されたと推定できる.当該泥炭層の上下には珪藻があまり見えないが泥炭層の直下では厚さが70cmである堆積物は粘土混濁水の電気伝導度と硫黄の含有量が高いことから,完新世最大海侵範囲に達した時期に形成された塩分湿地堆積物が推測できた.DC01地点から海の方向への現海岸線に約53km離れるQX01コアには,厚さ約40 cmの泥炭質粘土からなる珪藻に豊富に含める堆積層が存在することも明らかにされた.下位から上位に,湖沼浮遊群種であるMelosira ambigua,Melosira granulata,Diploneis ovalisおよび外洋浮遊群種のCoscinodiscus spp.,Achtiocyclus spp.などの珪藻を大量に含み,海水の影響を受けた塩分湿地の環境で形成された腐植質粘土層(I帯)とPinnularia spp.,Eunotia spp.,Synedra ulna,Gomphonema spp .などからなる淡水沼沢泥炭層(II帯)に区分できる.DC01コアの珪藻に富む黒色泥炭層の層底(標高-4.81m)とQX01地点の標高- 6.23mの泥炭層にAMS14C測年を行い,それぞれ7473 cal BPと7836cal BPの年代値が得られた.

QX01コアのI帯とII帯の境である標高- 6.13mは,約7836年前から海侵によりQX01地点へ影響を与える当時の平均大潮高潮位の高度とされる.その後,海侵が続き,最大海侵範囲がDC01地点に達したことあるいはやや超えたとされた.約7473年前に最大海侵範囲に達した後,海退が起こり始まり,海水に影響される塩分湿地から淡水湿地に変え,珪藻を豊富に含む泥炭層が形成されたと見られる.DC01地点の泥炭層はその直下に位置する塩分湿地堆積層との境界の標高の- 4.81mは海退が始めた時の平均大潮高潮線の高さを示される.