15:45 〜 16:00
[HCG29-02] 地層処分 − 基本的考え方と地球科学的課題 –
キーワード:地層処分、基本的概念、地球科学的課題
地層処分とは,地下約300mよりも深い地下岩盤内の地質環境中に,放射性廃棄物の潜在的影響がおおよそ無視し得るまでの数万年以上の間,隔離することを目的とするものである.地下に処分するという考え方は,これまで約半世紀の間,宇宙処分や海洋底処分などの様々な手法の技術的可能性の議論の上(e.g.OECD/NEA,1982;IAEA,1985),到達した1つの考え方だと言える.とくに数万年という長期の課題であることから,将来の世代に負担をかけないようにすることを前提に,最終的には鉱石から得たウランとその反応生成物を‘Return to nature’(e.g.Chapman, 2002)という考え方のもと,地表での気候変動などによる長期的擾乱/影響の及びにくい地下環境に委ねることを基本とする(e.g.act as a cocoon; Chapman et al., 2008).その考え方には,1970年代後半に,アフリカ・ガボン共和国のオクロ・ウラン鉱床での「天然原子炉」の発見が大きな影響を与えており(IAEA,1977),Passive isolation(受動的隔離)として広く共通の概念として認識されている.
近年では,このような概念を各国それぞれの地質環境にどのように展開するのかの検討段階にあると言える.例えば,地層処分先進国である北欧のフィンランドやスウェーデンでは,将来の気候変動(氷河期の再来など)の観点から長期における地上での保管・管理ではなく,先カンブリア紀の花崗岩類を主体とする岩盤への処分を決定した.しかし,岩盤としての古さよりも氷河−間氷期の氷床発達と除荷の繰り返し作用による地表からの影響をより正確に把握することが,現時点での地球科学的課題となっている.またフランスでは,地下水の動きが制限されるジュラ系の粘土層を処分候補の地層として選定することで,地表からの影響に対する物理的隔離効果のみならず,粘土層の元素移動抑制機能も重要視した地質環境の調査・選定が進められている.
日本においては,地層処分場として必要な領域は300m以深の2~3km四方と考えられているものの,岩種や地質体などはまだ何も決まっていない.そのため,処分の有効性を判断するうえでの具体的な知見を蓄積することに,限界のある状況であることは否めない.
地層処分は潜在的毒性が長期に顕在化する課題であり,廃棄物をそのまま放置することはできず,地層処分は一つの有力な解決策である.一方で,数万年後の安全性を現時点で確認することもできないというジレンマを抱える.上述のReturn to natureの概念の基,処分するかどうかを決めるのは社会の選択であり,その選択に際して,我が国の地質特性を踏まえたうえでの判断材料を提供することは極めて重要である.
近年では,このような概念を各国それぞれの地質環境にどのように展開するのかの検討段階にあると言える.例えば,地層処分先進国である北欧のフィンランドやスウェーデンでは,将来の気候変動(氷河期の再来など)の観点から長期における地上での保管・管理ではなく,先カンブリア紀の花崗岩類を主体とする岩盤への処分を決定した.しかし,岩盤としての古さよりも氷河−間氷期の氷床発達と除荷の繰り返し作用による地表からの影響をより正確に把握することが,現時点での地球科学的課題となっている.またフランスでは,地下水の動きが制限されるジュラ系の粘土層を処分候補の地層として選定することで,地表からの影響に対する物理的隔離効果のみならず,粘土層の元素移動抑制機能も重要視した地質環境の調査・選定が進められている.
日本においては,地層処分場として必要な領域は300m以深の2~3km四方と考えられているものの,岩種や地質体などはまだ何も決まっていない.そのため,処分の有効性を判断するうえでの具体的な知見を蓄積することに,限界のある状況であることは否めない.
地層処分は潜在的毒性が長期に顕在化する課題であり,廃棄物をそのまま放置することはできず,地層処分は一つの有力な解決策である.一方で,数万年後の安全性を現時点で確認することもできないというジレンマを抱える.上述のReturn to natureの概念の基,処分するかどうかを決めるのは社会の選択であり,その選択に際して,我が国の地質特性を踏まえたうえでの判断材料を提供することは極めて重要である.