日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG30] 圏外環境における閉鎖生態系と生物システム

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 202 (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:富田ー横谷 香織(筑波大学生命環境系)、木村 駿太(筑波大学大学院生命環境科学研究科)、座長:富田‐横谷 香織

14:50 〜 15:10

[HCG30-06] バイオスフィア実験を経験して考える人類の宇宙進出に必要なこと

★招待講演

*篠原 正典1 (1.帝京科学大学)

キーワード:閉鎖型生態系

地球上から離れてヒトが活動する場合、大きく二つの環境の構築が求められる。一つは生存できる物理化学的環境の構築であり、すでにISSにおいては3~6名の宇宙飛行士による生活・活動が恒常的に続けられるなど物理化学的処理による「環境制御を伴った生命維持システム(ECLSS)」は完成し実運用されている。また、より遠方でのより長期間の調査・開発を目指す場合、食料生産も行える植物を系の中に組み込んだ“バイオスフィア”(生物圏)を模したECLSSが期待され、民間主導で行われたBiosphere 2プロジェクト(8名、2年間)、NASA・JSCの月・火星生命維持実験プロジェクト(Lunar-Mars Life Support Test Project、4名、3か月など)、中国・北京航空航天大学で行われている月宮(Lunar palace、3~4名、100~200日間)など各国で行われている。もう一つは“ひと”らしく暮らせる社会環境の構築である。火星探査などを想定し、6名の多国籍のクルーによる地上模擬実験が期間(ロシア・Mars500、520日という長期の滞在)や環境(米国・HI-SEAS、ハワイ・マウナロア山頂という火星に類比可能な環境)を模して行われ、成功裏に行われてきた。

これら技術としての環境構築は成功し進歩してきたが、一方で、我々のこの地球上での暮らしそのものが自然環境に対しても社会環境的にも持続可能で安定的なものではないという現実がある。講演者は社会性の動物であるイルカ類の行動研究を専門とし、国内で(財)環境科学技術研究所によって行われたミニ地球プロジェクト(2名、最長1ヶ月)に居住者としてのべ42日間を閉鎖環境下で過ごした。これらの専門・経験を踏まえ、過去・現在のバイオスフィア実験を概観しつつ、将来、人類が宇宙空間で地球を離れて長期間活動するための課題を整理し報告する。