10:00 〜 10:15
[HDS07-05] 斜面崩壊によって励起された地震動波形の特徴 -2017年の事例-
近年、防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)に代表される稠密地震観測網の充実により、地すべりや斜面崩壊による震動を周辺の複数の地震計が記録する事例が報告されるようになった(例えば、Yamada et al., 2012; Doi et al.,2014; Ogiso and Yomogida, 2015)。特に夜間や山間部深くにおいて、このような地震計による斜面崩壊発生のリモートモニタリングは斜面災害の早期把握につながり重要であるが、斜面崩壊による地震波形の特徴の十分な理解が進んでいるとは言えない。そこで、本研究では2017 年に発生した複数の斜面災害に対し、地震波形記録の事例収集をおこなった。7 件の検討事例のうち、5 月19 日に発生した長野県飯山市における土石流と、7 月6 日に発生した大分県日田市における大規模斜面崩壊に伴って複数の地震観測点で明瞭なシグナルを認識することができた。そこで、これらのシグナルの特徴を整理し、その振幅を用いて震源決定を行った。
まず、斜面崩壊発生域を原点とするレコードセクションを描き、検出されたシグナルの伝播の様子を調べた。また、地震波形記録のランニングスペクトルを計算することによって波形の卓越周波数と継続時間を調べた。次に、斜面崩壊に伴う地震動は立ち上がりが不明瞭であるため、初動到達時刻を用いた震源決定は難しい。そこで、火山性微動等で用いられている振幅を用いた震源決定方法(Kumagai et al.,2010)を用いて地震波の励起源を推定した。
長野のケースでは、5月19日午前6 時37 分ごろ、崩壊発生域よりおよそ70 kmまで群速度3 km程度で伝播する波群が認められた。大分のケースでは、7月6日午前9時45分と46分の2回に分けて、崩壊発生域よりおよそ40 kmまで群速度3 km程度で伝播する波群が認められた。振幅を用いた震源決定の結果、両ケースにおいて、仮定した地震波のタイプ、速度、減衰パラメータによらず、崩壊発生域が振幅スペクトル比の再現誤差の小さな領域に含まれた。高周波地震動を用いた斜面崩壊のモニタリングの有効性を示すことができた。
波群の卓越周波数は両ケースとも0.5-3 Hz 程度であったが、大分のケースでは1回目がやや高く(1-3 Hz)、2回目が低く(0.5-2 Hz)なった。この情報をもとに現地調査の結果と比較し、現象と励起される地震波の関係について考察をしていく。
謝辞:Hi-net および気象庁の地震観測データを使用した。また、京大防災研と東大地震研の拠点間連携共同研究2017-K-04の支援を受けた。ここに記して感謝する。
まず、斜面崩壊発生域を原点とするレコードセクションを描き、検出されたシグナルの伝播の様子を調べた。また、地震波形記録のランニングスペクトルを計算することによって波形の卓越周波数と継続時間を調べた。次に、斜面崩壊に伴う地震動は立ち上がりが不明瞭であるため、初動到達時刻を用いた震源決定は難しい。そこで、火山性微動等で用いられている振幅を用いた震源決定方法(Kumagai et al.,2010)を用いて地震波の励起源を推定した。
長野のケースでは、5月19日午前6 時37 分ごろ、崩壊発生域よりおよそ70 kmまで群速度3 km程度で伝播する波群が認められた。大分のケースでは、7月6日午前9時45分と46分の2回に分けて、崩壊発生域よりおよそ40 kmまで群速度3 km程度で伝播する波群が認められた。振幅を用いた震源決定の結果、両ケースにおいて、仮定した地震波のタイプ、速度、減衰パラメータによらず、崩壊発生域が振幅スペクトル比の再現誤差の小さな領域に含まれた。高周波地震動を用いた斜面崩壊のモニタリングの有効性を示すことができた。
波群の卓越周波数は両ケースとも0.5-3 Hz 程度であったが、大分のケースでは1回目がやや高く(1-3 Hz)、2回目が低く(0.5-2 Hz)なった。この情報をもとに現地調査の結果と比較し、現象と励起される地震波の関係について考察をしていく。
謝辞:Hi-net および気象庁の地震観測データを使用した。また、京大防災研と東大地震研の拠点間連携共同研究2017-K-04の支援を受けた。ここに記して感謝する。