日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 津波とその予測

2018年5月24日(木) 09:00 〜 10:30 105 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:山本 近貞 直孝(防災科学技術研究所)、今井 健太郎(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、対馬 弘晃(気象庁気象研究所)、座長:谷岡 勇市郎(北海道大学大学院理学研究科地震火山研究観測センター)、山本 直孝(防災科学技術研究所)

09:30 〜 09:45

[HDS10-09] 時系列の相関係数極大を使用した2011年東北津波反射波の検出

*阿部 邦昭1岡田 正実 (1.なし)

キーワード:反射波、2011年東北津波、相関係数

はじめに:我々は2011年東北津波の反射波が太平洋全域の検潮記録にどう表れたかを調べてきた。その中で卓越したフェーズに着目し、チリ沿岸からの反射波が尾鷲などに到達したことを示し(岡田他、2013)、反射波の到来が相関係数の増加と対応していることなどを明らかにした(阿部他、2016)。今回、反射波の到来を客観的に示すために、予測到達時刻の誤差範囲内で、相関係数が極大値をとる場合と定義して、反射波の到来を調べた。

方法:基にする水位データは従来のものと同じで、2乗偏差を用いているが、さらに移動平均を追加してより長周期成分を強調した水位データを用意した。使用する30検潮所の水位データと、想定した21反射体、その伝搬図(走時)などは従来のものと同じである。各反射体からの反射波の初動から100分に限定し、各観測点ついてこれと同じ長さの観測波との間で相関係数を計算する。反射波の波形としては反射体の検潮所の記録を使う。検潮記録の得られていない場合は近傍の検潮所の記録を走時分だけ時間をずらして使用する。そして観測波を1分ごとにずらしながら相関係数の時間変化(相互相関関数)を求める。予測走時の誤差0.5hr範囲内で相互相関関数が極大値を示した時、反射波が到達する時刻に対応するとした。相関係数が1に近いほど反射波の出発点の波形に近いということになり、相関係数の大きさは反射波の再現性の指標となる。

結果:反射体と観測点の組合わせで、検討したものは611組で、そのうち走時誤差範囲内で極大値を示したのは363組である。この中にはミッドウエイ島と欽明海山(ミッドウエイの検潮記録を使用)からの反射波が同時に到達するために、原理的に識別不可能な場合も含まれている。極大値決定の割合は59%である。図1はチリ沿岸反射体からの反射波(最下段)と、イースター島、ジョンストン島、花咲の波形の間で相互相関関数を求め、極大が計算走時の誤差範囲にあるときの極大の位置を計算値と比較し、その時の相関係数を示したものである。これはいずれも誤差範囲内に極大が現れた場合である。極大が現れた場合と、現れない場合を区別し、現れた場合は相関係数で区分し、分布図にした。極大が現れない場合に着目すると、当該反射体の手前に別の反射体があり、反射波が手前の反射体にさえぎられたとすると理解できる場合が多い。このことは極大値が反射波の到達によって引き起こされたということを支持している。反射体ごとに相関係数の極大値の平均値を求めると、最大はチリ海膨反射体の0.83、最小はエクアドル沿岸反射体の0.29である。エクアドルからの反射波は多くの観測点で観測されたが相関係数が小さいことは、広範に反射波を放射したが振幅が小さく、観測水位に与える影響が小さかったことを示している。

謝辞:検潮データはNOAA,気象庁によるものを使いました。記して感謝いたします。