日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 津波とその予測

2018年5月24日(木) 13:45 〜 15:15 105 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:山本 近貞 直孝(防災科学技術研究所)、今井 健太郎(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、対馬 弘晃(気象庁気象研究所)、座長:藤井 雄士郎山中 悠資

15:00 〜 15:15

[HDS10-23] A large slip area of the 1854 Ansei-Tokai earthquake estimated from an observed tsunami waveform at San Francisco

*宇野 花蓮1谷岡 勇市郎1山中 悠資2 (1.北海道大学、2.東京大学)

キーワード:1854年安政東海地震、1944年東南海地震、津波数値計算

南海トラフではフィリピン海プレートの沈み込みにより100~150年間隔で巨大地震が繰り返し発生し、各地に甚大な被害をもたらしてきた。先行研究では1854年安政東海地震の震源域のうち、東海地域以外の領域が1944年東南海地震で再び大きくすべったとされていた。1854年安政東海地震以降160年以上東海地震は発生しておらず、さらに1944年東南海地震からも70年が経過し、南海トラフでの次の巨大地震の発生が危惧されている。南海トラフ巨大地震の長期予測において、1854年安政東海地震の震源域を決定することは重要である。1944年東南海地震は地震学的データと津波記録によって震源過程が詳しく研究されているが、1854年安政東海地震はそのような精度の良い機械データに欠けており古文書による記録しか残されていないため、十分に研究されていない。一方で、1854年安政東海地震によって発生した津波がアメリカのサンフランシスコに到達し、サンフランシスコの検潮所で観測されているものの、このことについて言及した先行研究はない。そこで本研究では、観測された津波波形を用いて1854年安政東海地震の震源過程を分析した。そして1854年安政東海地震の主なすべり領域は1944年東南海地震で再び破壊されたのか、もしそうでなければ二つの地震のすべり領域の違いは何なのかという疑問に答える。

津波は線形ブシネスク理論式を用いて数値計算し、計算格子間隔は1.5分とした。まず先行研究によって示されている断層モデルのうち、古資料の海岸上下変動のデータを拘束条件として相模トラフ沿いの断層と南海トラフのプレート境界深部の断層の位置と平均すべり量 (4m) を決定した。次にそのプレート境界浅部の平均すべり量を推定するため、断層面積と平均すべり量を仮定しながら津波の数値計算を行いサンフランシスコにおける津波波形を推定し、観測津波波形と比較した。その比較から、サンフランシスコの津波波形を良く再現するためには、プレート境界浅部の平均すべり量が5~7m必要であることがわかった。1944年東南海地震では平均すべり量が0~1mと推定されているプレート境界浅部が1854年安政東海地震では大きく破壊されていた。この結果は、1854年安政東海地震で破壊されたプレート境界浅部は1944年東南海地震では破壊されていないことを示した。1854年安政東海地震の震源過程は1944年東南海地震のそれとは異なると言えるだろう。つまり南海トラフでの巨大地震の発生パターンは今まで考えられていたものよりさらに複雑である可能性がある。