[HDS10-P09] 津波・非津波成分を同時推定する沖合津波波形逆解析による津波即時予測
キーワード:津波予測、逆解析、津波警報
日本近海には海底水圧計やGPS波浪計が稠密に展開され,気象庁による津波監視・警報更新に活用されている.我々は,より正確な津波予測に向けて,沖合津波波形逆解析に基づく津波予測手法(tFISH:Tsushima et al. 2009, 2012, JGR)の高度化を進めている.tFISHでは,「沖合津波観測記録は,津波波形と水圧計直下の地殻変動オフセットの線形和で表現される」という仮定に基づいて初期水位分布を推定する.海底水圧計では,地殻変動や津波として説明困難なオフセット変化(Wallace et al. 2016, JGR)や長周期変動(Tsushima and Hino, 2008, ASC Meeting)が記録されることがある.こうした非津波成分が観測記録に含まれると,偽波源が推定され,津波予測精度が低下する.これを改善するため,対馬・山本(2017, 地震学会)は,tFISHの観測方程式を改良した(改良後tFISH).本研究では,様々な規模・位置の地震を仮定した数値実験を行い,改良後tFISHの津波予測性能を検証した.また,改良後tFISHを適用しても偽波源を必ずしも十分に軽減できるとは限らないため,tFISHにより得られる津波予測結果の信頼度をリアルタイムに判定する指標を考案する.
対馬・山本(2017, 地震学会)が提案した改良後tFISHでは,沖合津波観測記録から,初期水位分布と観測点毎の地殻変動オフセット量に加えて,観測点毎の非地殻変動オフセット量,線形一次トレンド傾斜量を同時推定する.一例として,宮城県沖を震源とするMw 8.0のプレート境界地震を仮定し,最大振幅0.5 mを持つ非地殻変動オフセットと非津波長周期成分を含む仮想観測記録を用いた数値実験の結果を述べる.非津波成分を含まない観測記録に改良前tFISHを適用すると,地震発生後10分で真値とほぼ一致する波源分布と沿岸津波予測高が得られる.一方,非津波成分を含む観測記録に改良前tFISHを適用すると,時間経過とともに非津波成分による偽波源が顕著になり,波源・沿岸津波予測高が悪化した.これは逆解析で用いるデータ窓内の非津波長周期成分の振幅が,時間経過とともに増大することに起因する.他方,改良後tFISHを適用すると,非津波成分の影響を軽減でき,時間経過しても波源分布・沿岸津波予測高ともに真値に近い良好な結果が得られた.
次に,tFISHで得られる津波予測結果の信頼度をリアルタイムに判定する指標として2種類を提案する.1種類は波形逆解析に用いる観測波形と計算波形の合致度Variance Reduction(VR)で,具体的には観測波形と計算波形でそれぞれ規格化したVROとVRCを用いる(以降,津波波形VR).もう1種類は現時刻と前時刻に得られた波源分布の合致度である.津波が十分観測されると津波・地殻変動・非津波成分を分離推定しやすくなり,得られる波源の空間分布が変化しなくなることが期待されるからである.具体的には,10分前に得られた波源分布との相関係数,10分前と現時刻の波源分布でそれぞれ規格化したVRを用いる(以降,波源VR).これらの判定指標は,Yamamoto et al. (2016, EPS)のマルチインデックス法で採用されている指標を参考にした.本研究では,暫定的に,津波波形VRの閾値を0.95,波源VRの閾値を0.8とし,全指標が閾値を超えたらGOOD判定,それ以外はBAD判定とした.上述のMw8.0地震の予測結果に適用すると,波源推定・津波予測の精度と整合する判定結果が得られた.本発表では,異なる規模・位置が異なる地震津波に対して,改良後tFISHと判定指標を適用した結果についても報告する.
対馬・山本(2017, 地震学会)が提案した改良後tFISHでは,沖合津波観測記録から,初期水位分布と観測点毎の地殻変動オフセット量に加えて,観測点毎の非地殻変動オフセット量,線形一次トレンド傾斜量を同時推定する.一例として,宮城県沖を震源とするMw 8.0のプレート境界地震を仮定し,最大振幅0.5 mを持つ非地殻変動オフセットと非津波長周期成分を含む仮想観測記録を用いた数値実験の結果を述べる.非津波成分を含まない観測記録に改良前tFISHを適用すると,地震発生後10分で真値とほぼ一致する波源分布と沿岸津波予測高が得られる.一方,非津波成分を含む観測記録に改良前tFISHを適用すると,時間経過とともに非津波成分による偽波源が顕著になり,波源・沿岸津波予測高が悪化した.これは逆解析で用いるデータ窓内の非津波長周期成分の振幅が,時間経過とともに増大することに起因する.他方,改良後tFISHを適用すると,非津波成分の影響を軽減でき,時間経過しても波源分布・沿岸津波予測高ともに真値に近い良好な結果が得られた.
次に,tFISHで得られる津波予測結果の信頼度をリアルタイムに判定する指標として2種類を提案する.1種類は波形逆解析に用いる観測波形と計算波形の合致度Variance Reduction(VR)で,具体的には観測波形と計算波形でそれぞれ規格化したVROとVRCを用いる(以降,津波波形VR).もう1種類は現時刻と前時刻に得られた波源分布の合致度である.津波が十分観測されると津波・地殻変動・非津波成分を分離推定しやすくなり,得られる波源の空間分布が変化しなくなることが期待されるからである.具体的には,10分前に得られた波源分布との相関係数,10分前と現時刻の波源分布でそれぞれ規格化したVRを用いる(以降,波源VR).これらの判定指標は,Yamamoto et al. (2016, EPS)のマルチインデックス法で採用されている指標を参考にした.本研究では,暫定的に,津波波形VRの閾値を0.95,波源VRの閾値を0.8とし,全指標が閾値を超えたらGOOD判定,それ以外はBAD判定とした.上述のMw8.0地震の予測結果に適用すると,波源推定・津波予測の精度と整合する判定結果が得られた.本発表では,異なる規模・位置が異なる地震津波に対して,改良後tFISHと判定指標を適用した結果についても報告する.